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下水君100周年記念企画 ~ 縁石、縁塊等


東京府東京市

縁石、縁塊等
 
少し間が開いてしまったが、下水君100周年記念企画の第17回。今回は下水君の親友、古い蓋に付き物の縁石(えんせき)と、それに関連するものを幾つか取り上げてみる。
 
写真は立派な縁石に縁取られた下水君の蓋。下水道の仕様書や書籍を見ると、「縁石」という用語の他に、似たもの・関連するものとして、「縁塊(えんかい)」、「森式装鉄コンクリート・ブロック」、「口環(こうかん)」、「鉄枠」、さらに「側塊(そくかい)」、「底塊(ていかい)」、「床版(しょうばん)」、「底版(ていはん)」といった用語が出てくるのだが、今回の記事を最後まで読むとその関係を一通り理解できるようになっているので、最後までどうぞお付き合い願いたい。
 
 
 

東京市下水道設計標準圖より

昭和4年発行の東京市下水道設計標準圖には縁石の設計図が記載されている。最初に載せた写真の縁石は、この設計図通りに造られているようだ。図に例示されているのは六個巻の縁石だが、左下の表によると口径二尺五寸及び三尺の蓋の場合は八個巻となっている。写真の縁石は八個巻で、また三尺の蓋は三重の東京市型地紋になるため、写真の蓋は二尺五寸の蓋ということになる。なお、六個巻の縁石は東京帝國大學関連の蓋に多数現存している。(表は上から、鉄蓋直枠口圣二尺用、二尺五寸用、三尺用、鉄蓋斜枠口圣二尺用、二尺五寸用、燈孔鉄蓋内圣八寸用)
 
表にある通り、燈孔に使われる縁石は四個巻、また自働洗滌槽にも縁石があったようだ。今のところ縁石付き自働洗滌槽の現存報告は無いようだが、ただでさえ存在感のある自働洗滌槽の蓋に縁石まで付いていたとしたら、相当目立つ存在だったろうことが想像される。
 
 
 

東京府東京市

設計図通りに四個巻の縁石に囲まれた燈孔蓋。
 
 
 

東京府東京市

こちらの縁石はやや造り込みが甘いようだ。隙間が多くて不揃い、でも立派。
 
 
 

東京府東京市

六個巻の縁石が使われた例もある。(六個巻の縁石に見えるように線を入れたコンクリートの可能性もある)
 
 
 

東京府東京市

続いて雨水桝蓋に使われている縁石。100年近く現役で使われているはずだ。自働洗滌槽の縁石もこのように設置されていたのだろう。
 
 
 

東京府東京市

汚水桝の蓋にも六個巻の縁石。縁石の幅が狭い。
 
 
 

東京府東京市

こちらも汚水桝の蓋。四個巻の縁石。
 
 
 

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角型汚水桝の蓋にも縁石が使われているものがある。判別が難しいが、この写真では4つの縁石が風車の羽のような配置で設置されている。同じ様式でわかりやすい縁石は巢鴨町尾久町などの例がある。
 
 
 

東京府東京市

こちらも角型汚水桝の蓋だが、この蓋の周りはコンクリートで造られた縁塊になっており、縁石は使われていない。ここまで、縁塊と縁石の違いを敢えて説明してこなかったが、「縁塊」とは、この写真のように一纏まりの「塊状」になっているもの、下水道工事の際に単一の構成部品として扱うものを言うようだ。ここまで掲載してきた蓋の周りにあるものは「縁石」で、この写真の蓋の周りにあるのは「縁塊」ということになる。
 
 
 

東京市下水道設計標準圖より

先程の汚水桝に使われていた縁塊の設計図。汚水桝縁塊として記載されている。「B.W.G.」との表記があるが、これは針金の太さを示す線番(バーミンガムワイヤーゲージ: Birmingham Wire Gauge)のことで、No.8は直径0.165インチ(4.191mm)の針金(鉄筋)ということになる。
 
 
 

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続いてL型汚水桝とその周辺に着目。写真で蓋の上部にあるのが縁石で、蓋を受ける部分には蓋受金物が装着されている。苔が生えていて判別が難しいが、写真で蓋の下部にも独立した縁石がある。これらの縁石も東京市下水道設計標準圖に記載されている。
 
 
 

東京都

こちらは下水君ではないが、都章の入ったL型雨水桝蓋とその周辺。こちらは縁石ではなく、鉄筋コンクリートでできた一纏まりの「縁塊」になっている。こちらの設計図は現行の下水道設計標準に「L型ます縁塊」として記載されている。
 
 
 

東京都

今度はコンクリート蓋とその周辺。ここまでしっかり読んで頂いたのなら、これは「縁石」ではなく「縁塊」だと即答しないと落第することになるが、話はもう少し複雑になる。
 
 
 

東京都下水道設計標準

その設計図。現行の下水道設計標準に記載されているが、「縁塊」ではなく「人孔口環」として記載されている。新しい用語が出てきたがうろたえてはいけない。同じ下水道設計標準の汚水ます関連の項目には、ほぼ同じ構造のものが「汚水ます縁塊」として記載されているので、現行の仕様書になって「縁塊」という用語が「口環」と言い換えられたわけではなく、両方の用語が仕様書に載っていることになる。「口環」で検索するとメーカーの仕様書が数多く出てくるが、「口環」と「縁塊」は同列の扱いになっていることが多く、人孔に関するものを「口環」、ます類に関するものを「縁塊」と使い分けているようだ。ちなみに、写真の人孔口環は常に人孔コンクリート蓋と共に使われるようで、鉄蓋と一緒に使われることは無いようだ。なお、メーカーによっては鉄枠(後述)を「鋳鉄製口環」と表記しているが、本記事では東京都の仕様書に沿った表現を基に分類している。
 
 
 

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最も初期のコンクリート蓋と人孔口環。口環部分はだいぶ磨り減っているようで、鉄筋が見えている。口環部分も蓋と同じく戦前に造られたものと思われるが、鉄筋の形状は現行の設計図とほとんど同じようだ。
 
 
 

東京府東京市

人気の高い人孔縁塊。仕様書に記載はないが、以前記事にしたように、G&U Vol.3(G&U技術研究センター 2008)のコラムに記述がある。

東京市では道路課も下水課も昭和4年から60cm用の人孔縁塊を使用していた。マンホールに縁塊をつけたのは、簡易舗装の道路か砂利道であったため。東京市芝區田村町にあった明工舎の森勝吉さんが考案したものといわれ、当時の名称は「森式装鉄コンクリート・ブロック」といい、実用新案品だった。

他に資料はないかと探してみたところ、日本下水道技術史余談(板倉誠 日本上下水道設計株式会社 1975)に以下の記述を見つけた。

盗難防止のために先輩森勝造(※勝吉の誤記)氏の考案を採用して鉄枠コンクリート詰の人孔蓋が特に交通の激しくない所に広く適用され今日でも受けつがれてきている。後段にのべる雨水枡、汚水枡の蓋も同様鉄枠コンクリート詰製品に変わったのである。森先輩は色々新工夫する人で一時装鉄ブロックというものを考案し駅の階段や電車路の敷石等に進出されたがこの方はあまり成功しなかった。上水道方面でも森式ジョイントで名を売った人である。
(※括弧内は筆者追記)

著者の板倉氏は第一高等學校東京帝國大學(工學部土木課)を経て、東京市下水課、日本上下水道設計㈱に勤められているので、先輩と書かれている森勝吉氏もこのどれかに在籍していたのだと思われる。森氏の履歴はともかく、この記述を見ると、「森式装鉄コンクリート・ブロック」とは人孔縁塊そのものではなく、その材料のことを指しているようだ。それを元に改めて森氏の古い実用新案出願公告を探してみたところ、以下の資料が見つかった。
 
 
 

実用新案出願公告S3-5448

実用新案出願公告(昭和3年7600号)「鑄鐵張路面舗裝材」の付図。これが「森式装鉄コンクリート・ブロック」であると思われる。形は円形ではなく長方形だが、鋳鉄板の模様はまさしく人孔縁塊のものだ。石材に比べて強度の弱いコンクリートを鋳鉄板で補強し、さらに端部に凹みを設け鉄筋を組み込むことで、手懸りがないために扱いにくかった石材の不便さを解消している。石材代用舗装材として出願されている。
 
 
 

実用新案出願公告S4-10463

さらに実用新案出願公告(昭和4年10463号)「路面舗裝用混凝土塊接手」の付図。「混凝土」とは「コンクリート」のことだ。「森式装鉄コンクリート・ブロック」を強固に連結する方法が出願されている。
 
 
これらを応用して造られたのが人孔縁塊ということのようだ。「縁塊」と表現されているからには、下水道工事の際には既に一つの部品として完成しており、縁石のように現場で組み立てるものではなかったのだと思われる。
 
 
 

東京府東京市

人孔縁塊はコンクリート蓋にも用いられている。
 
 
 

東京府東京市

こちらも同じく人孔縁塊付きのコンクリート蓋だが、少し変わっている。
 
 
 

人孔縁塊が階段の一部に

人孔縁塊がなんと階段の一部として利用されている。何とも斬新な使用方法だ。森式装鉄コンクリート・ブロックの下部の形状も観察することができる。
 
 
 

東京都

次は、「鉄枠」について注目してみる。といっても地上から見える部分は僅かだが。
 
「鉄枠」という用語が仕様書に載るようになったのは比較的最近のことのようで、少なくとも昭和4年・昭和8年の仕様書には「鉄枠」という表記はなく、鉄蓋の付属物としての扱いだ。蓋に蝶番やロック機構が付けられるようになってから「鉄枠」についても詳しい仕様が必要になり、仕様書にも独立して記載されるようになったのだと思われる。
 
なお、縁石や縁塊、口環に付けられた受け枠の金属部分は「蓋受金物」と表現されており、「鉄枠」ではない。地上から見える部分の形状は同じだが、「蓋受金物」は石材やコンクリートに装着される部品(鉄の輪っか)であるのに対し、「鉄枠」は地上よりも地下に広がる、それ全体が鋳鉄でできた一つの構成部品である。
 
 
 

鉄枠

と、言葉で説明しても何だかよくわからないので写真。これが鉄枠、ただの輪っかではない。内側には蝶番やロック機構もあり、複雑な造りになっている。
 
 
 

東京都

以前掲載した角蓋の鉄枠は存在感がある。
 
 
 

東京都

下水君ではないが、人孔鉄蓋飛散防止用鉄枠。こちらも存在感が半端ない。
 
 
 
他、側塊、底塊、床版、底版といったものも最初に挙げたが、これらは地上からは確認できない部分にある。それぞれの役割は以下の通りだ。

側塊
マンホール・ます内部の壁部分
底塊
底版を含め、マンホール・ますの下部で、下水管との接続部分
床版
比較的路面近くに設置され、内部に広がるマンホールに対し、道路を支える役割をする部分
底版
マンホール・ますの地盤に接触している最も底の部分

 
 
最後に、縁石、縁塊、口環、鉄枠についても纏めておく。なお、縁石、縁塊、口環の役割は、人孔やます、燈孔などの補強を行うことで、簡易舗装や砂利道の多かった昭和初期に設置されたものには立派なものが多い。

縁石
主に石材を使用。工事現場で蓋の周辺に組み合わせる。用途に応じて、人孔縁石、燈孔縁石、自働洗滌槽縁石、汚水桝縁石、雨水桝縁石などがある。
縁塊
一つの塊状の構成部品。鉄筋コンクリートや森式装鉄コンクリート・ブロックを材料とする。用途に応じて、人孔縁塊(森式装鉄コンクリート・ブロックを使用)、L型ます縁塊、汚水桝縁塊、雨水桝縁塊などがある。蓋受金物を装着することが多い。
口環
縁塊と同様一つの塊状の構成部品。東京都下水道局においては、仕様書にあるのは鉄筋コンクリート製の人孔口環のみで、人孔コンクリート蓋と共に使用する。また、同様の構造でもます類では縁塊と表記している。メーカーによっては下記「鉄枠」を「鋳鉄製口環」と表記する場合もある。
鉄枠
蓋を支える鋳鉄製の構造物。新しいものでは、蝶番、ロック機構などを備えた複雑な造りになっている。用途に応じて、人孔鉄枠、人孔鉄蓋飛散防止用鉄枠、人孔鉄枠(GLV型)、人孔鉄枠(角蓋用都型)、特殊人孔鉄枠(圧力蓋用)、人孔鉄枠(レンガ用都型化粧蓋)、汚水ます鉄枠、雨水浸透ます鉄枠などがある。

 
 
以上、もやが晴れてすっきりした気分にはなったが、何かの役に立つのだろうか、これ。
 
 
 
関連リンク
  ●下水君100周年記念企画01 ~ 東京市型鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画02 ~ 日之出水道機器株式会社
  ●下水君100周年記念企画03 ~ 鉄蓋工業株式会社
  ●下水君100周年記念企画04 ~ 変則東京市型
  ●下水君100周年記念企画05 ~ デザイン蓋
  ●下水君100周年記念企画06 ~ コンクリート蓋
  ●下水君100周年記念企画07 ~ 化粧蓋
  ●下水君100周年記念企画08 ~ L型汚水桝・雨水桝蓋
  ●下水君100周年記念企画09 ~ 汚水桝・雨水桝鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画10 ~ 特殊人孔鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画11 ~ 自働洗滌槽
  ●下水君100周年記念企画12 ~ 燈孔蓋
  ●下水君100周年記念企画13 ~ 中水道
  ●下水君100周年記念企画14 ~ その他の蓋
  ●下水君100周年記念企画15 ~ 送泥管
  ●下水君100周年記念企画16 ~ 私設下水道施設檢査證章標、他
  ●下水君100周年記念企画18 ~ 鉄蓋虐待
  ●下水君100周年記念企画19 ~ 越境記録
  ●下水君100周年記念企画20 ~ 下水君の親類
  ●下水君100周年記念企画21 ~ 生い立ちの記
 



下水君100周年記念企画 ~ 私設下水道施設檢査證章標、他


私設下水道施設檢査證

私設下水道施設檢査證章標、他
 
下水君100周年記念企画の第16回。今回は下を向いていると見つからない下水君、玄関や門に貼られる検査済証や届出済証を取り上げる。
 
筆者の調査によると、東京区部の下水道に関するこの手の検査済証・届出済証は、下水道条例の改正に伴って3回、東京都シンボルマーク制定によるデザイン変更が1回と計4回の大きな変更があり、細かなデザインの違いを含めると少なくとも9種類は存在するようだ。先にその分類を示しておく。(日付は関連条例・細則の告示日)

  • 私設下水道施設檢査證章標(大正11年6月21日~)
  • 東京都私設下水道章標(昭和20年11月?~)
  • 排水設備等検査済証(昭和34年12月28日~、2種類)
  • 排水設備届出済証(昭和52年3月~、下水君3種類)
  • 排水設備届出済証(平成元年6月1日~、シンボルマーク2種類)

 
 
 

東京市公報より

最初に掲載した写真は最も初期のもので、名称は「私設下水道施設檢査證章標」という(正確には私設下水道施設檢査證と共に交付される章標)。デザインは、最初の下水道条例が施行された日(大正11年6月21日)の東京市公報に掲載されている。公報の一部はこちらで確認できる。
 
 
 

東京市公報より

こちらは同公報の一枚目のページ。東京市長が男爵の後藤新平となっている。
 
 
 

東京都私設下水道章標 東京都私設下水道章標

続いて「東京都私設下水道章標」。右横書きになっている。良い状態のものが少ないので写真を2枚掲載しているが、様式は全く同じものだ。東京都は昭和18年7月に成立しているのでこの章標もそこまで遡ることができるのかもしれないが、確認できた範囲では下水道条例の改正は昭和20年11月の告示が最も古かったので、この章標も同時期に制定されたものではないかと想像している。ただし、昭和20年11月告示の下水道条例の内容はまだ確認できていないので明言はできない。下水道条例はその後昭和26年12月22日と昭和34年12月28日の告示で全部改正されており、その後は部分改正を繰り返して現在の下水道条例に繋がっている。ちなみに確認できた昭和26年告示の下水道条例で私設下水道に関連する条文は以下だが、章標に関する記述は無かった。

東京都下水道条例(昭和26年12月22日 東京都条例第146号)
(下水道の使用の開始、中止、廃止の届出)
第十二条
私設下水道その他知事が定める施設により下水道の使用を開始し、中止し又は廃止しようとするときは、使用者、義務者又は総代人から知事に届け出なければならない。

 
 
 

排水設備等検査済証 排水設備等検査済証

こちらは「排水設備等検査済証」。右と左とでは、微妙に文字の大きさと字間が異なっている。また、これまでプレートを釘で固定する方式だったものが、シールになっている。
 
この「検査済証」については、昭和34年の地方自治法改正を受けて全部改正された下水道条例に明記されている。

東京都下水道条例(昭和34年12月28日 東京都条例第89号)
(排水設備等の工事の検査)
第六条
排水設備等の新設等を行つた者は、その工事を完了したときは、管理者の定めるところにより、工事の完了した日から五日以内にその旨を届け出て検査を受けなければならない。
2 前項の検査に合格したときは、管理者は、当該排水設備等の新設等を行つた者に対し検査済証を交付する。

というわけで、「排水設備等検査済証」は昭和34年以降のものであることは確かなようだ。
 
 
 

排水設備届出済証

検査済証・届出済証の多くは民家の玄関に貼られていることが多く、撮影に関してはマンホールの蓋以上に気を使う。家主さんがたまたま外に居れば一声かけるのだが、わざわざチャイムを押して撮らせてくれというのも変だし、結局人目を忍んで遠くから撮影することが多く、こんな写真ばっかりだ。
 
ともかく、これには「排水設備届出済証」と書かれている。「検査済証」から「届出済証」と名前を変えている。上部には四角い枠の中に「北二」と書かれているが、これは地区名を示しているようだ。
 
排水設備に関しては、昭和51年5月の下水道法改正を受けた昭和52年3月告示の下水道条例の部分改正で、その検査・届出の方法が大きく変わっており、「検査済証」から「届出済証」への変更もこの改正によるものだと思われる。この改正では、これまで工事後に検査を行っていた排水設備に関して、新設・変更の計画を予め届け出て、工事の事前チェックを行うようになっている。
 
 
 

排水設備届出済証 排水設備届出済証

同じく「排水設備届出済証」。中央にシリアルナンバーを記入できるようになっている。この画像では画像処理により番号部分を消しているが、実際には5桁の番号が記入されている。さらに右の届出済証には、左右上部に「東京都 下水道局」の文字が入っている。
 
 
 

排水設備届出済証 排水設備届出済証

そしてこちらが現行の「排水設備届出済証」。下水君が平成元年6月1日に告示されたシンボルマークに変更されている。シンボルマークの制定により、これまで都章を使っていたものは原則このシンボルマークに置き換えるということになったので、それを受けて「届出済証」の下水君もシンボルマークに置き換わったのだと思われる。このデザインのシールは下水道局のリーフレットでも確認できる(2014/06/20 追記:リンク先のPDFが更新されてしまったようなので、執筆時に掲載されていたPDFの画像を一部引用しておく)。また、左は白地のシールだが、右は金属光沢のシールになっている。
 
 
最後に、そもそもこれら検査済証や届出済証はどういった場面(建物)で使われるのかについてだが、下水道局のページに排水設備の工事届出の要否に関する記述がある。これによると、新築や排水設備を含む改築を行った場合はほぼ全て該当しそうだ。町を歩いて探してみてもあまり見当たらないのは、屋内の排水設備に貼られている場合や、集合住宅であれば管理人室に貼られている場合があること、さらに貼り忘れなどいろいろ考えられるが、実際のところはよくわからない。
 
都内区部に在住している方は、家のどこかにこのシールがあるかどうか探してみていただきたい。そしてもし今回の記事に掲載されていない検査済証・届出済証があったら是非ご一報を。
 
 
 
関連リンク
  ●下水君100周年記念企画01 ~ 東京市型鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画02 ~ 日之出水道機器株式会社
  ●下水君100周年記念企画03 ~ 鉄蓋工業株式会社
  ●下水君100周年記念企画04 ~ 変則東京市型
  ●下水君100周年記念企画05 ~ デザイン蓋
  ●下水君100周年記念企画06 ~ コンクリート蓋
  ●下水君100周年記念企画07 ~ 化粧蓋
  ●下水君100周年記念企画08 ~ L型汚水桝・雨水桝蓋
  ●下水君100周年記念企画09 ~ 汚水桝・雨水桝鉄蓋
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下水君100周年記念企画 ~ 送泥管


東京都

送泥管
 
下水君100周年記念企画の第15回。今回は送泥管関連の下水君を紹介する。といっても該当するものは一種類しかないのだが、この写真は下水君らしき紋章が入った送泥管の埋設表示プレートだ(正式名称は不明)。しっかりと測ってはいないのだが、一辺は10cm程度と小型だ。
 
「送泥管」とは、各処理場で発生した汚泥を、効率的な汚泥処理が可能な処理場へ送るための設備で、下水道局の管轄になる。従ってこの紋章も、かなり簡略化されてはいるが下水君に間違いないと思われる。
 
 
 

東京都

参考画像。こちらのプレートは上水道の水道管の屈曲部がこの下にあることを示しているらしく、水道局が設置する他の蓋と同じく都章が入っている。
 
 
 

東京都

送泥管に関連する蓋もあるのだが、下水君ではなく平成4年より使われている桜マークの蓋しか見つからなかった。写真の蓋は下部に「圧送」と書かれているが、これは汚泥の圧送のことで、このマンホールは送泥管に付随する設備のひとつだと思われる。
 
 
 

東京都

同じく桜マークの入った、送泥管の制水弁の蓋。
 
 
 

東京都

同じく空気弁の蓋。
 
 
 

東京都

こちらは排泥弁の蓋。これらの蓋は最初に掲載した下水君のプレートと同じく王子駅北東、豊島二丁目交差点付近に設置されている。制水弁・空気弁・排泥弁と、上水道に使われる弁と同じ名称の弁が並ぶが、これらは恐らく、送泥管に汚泥を流す際に利用するのではなく、管の腐食を防ぐために綺麗な水を流す際に利用するのだと思われる。
 
送泥管や汚泥処理については、社団法人東京下水道設備協会のテクノワールドQ&Aのページで、子供向けとは思えないほど詳しく丁寧に解説されている。管が壊れた時に備えて送泥管が2本1組になっている部分があること(これは下水道台帳でも確認できる)や、長い時間送泥を停止する際の対応など興味深い説明があるので、興味のある方は是非御一読を。
 
 
 
関連リンク
  ●下水君100周年記念企画01 ~ 東京市型鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画02 ~ 日之出水道機器株式会社
  ●下水君100周年記念企画03 ~ 鉄蓋工業株式会社
  ●下水君100周年記念企画04 ~ 変則東京市型
  ●下水君100周年記念企画05 ~ デザイン蓋
  ●下水君100周年記念企画06 ~ コンクリート蓋
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  ●下水君100周年記念企画21 ~ 生い立ちの記
 



下水君100周年記念企画 ~ その他の蓋


東京都

その他の蓋
 
下水君100周年記念企画の第14回。今回はこれまでの分類に当てはまらない蓋を幾つか紹介する。写真は中央に下水君が入り、格子状に細長い穴がたくさん開いた蓋だ。設置場所は内幸町2-2付近、内幸町駅の出口近くだが、この辺りは下水道台帳のオンラインで確認できる範囲にはなく、非表示エリアに該当する。今のところここでしか見たことが無い蓋なので、何か特殊用途のマンホールなのだと思われるが、詳細は不明だ。都庁まで行けば非表示エリアの台帳も確認できるので、機会があれば調べてみたい。
 
 
 

東京都

こちらは蝶番の付いた大きな蓋。直径は110cm 程度。都章の入った似た様式の蓋を千川上水の暗渠上で見かけたことがある。この蓋は東五反田2-3に設置されているが、下水道台帳で調べるとこの辺りには「空気管」というあまり聞いたことのない管が布設されているようだ。空気管というものが下水道においてどういった役割を果たしているのかということまでは調べがついていないのだが、この蓋もそれに関連した設備の一部なのかもしれない。
 
 
 

東京都

続いて京王井の頭線の東松原駅裏で見つけた蓋。ここに2枚あるのみで他の場所で同じ蓋を見かけたことはまだ無い。最初に掲載した蓋と似ているが、格子の間隔が均一ではなく、穴も一部にしか開いていない。しかもそれらの穴はゴムで栓をされ、その上に苔が生えて小さな盆栽ができている。蓋の左側、鍵穴の横には「O↔S」と書かれているが、これは長島鋳物㈱のロック構造で、「O」は「OPEN」、「S」は「SHUT」の頭文字だと思われる。
 
 
 

東松原駅の裏

下水道台帳によるとここにあるのは「特殊人孔(内径90cm以上)」ということだが、それ自体はそう珍しいものではなく、普通の桜蓋で蓋をされた同じ特殊人孔(内径90cm以上)はたくさん存在する。
 
 
 

東京都

こちらは三角形の蓋2枚1組で構成される蓋。こちらの蓋にも長島鋳物㈱のロック構造を示す「O↔S」の表記がある。製品名は「大型特殊三角鉄蓋・NTBS型」とのことだ。
 
 
 

4連8枚の蓋

この蓋は京急の北品川駅近く、北品川橋のたもとに設置されているが、下水道台帳によると雨水管の終端にある「防潮扉付人孔」で、目の前の天王洲運河へ通じているようだ。
 
 
 

合成写真

こちらは合成写真だが、㈱技術研究センターの発行する技術広報誌、G&Uの第3号(2008年10月)の「マンホールふたに古き東京の名残り」というコラムにはこのような形状の蓋の写真も掲載されている。まだどこかに現存している可能性が高そうだ。
 
追記(2012/02/10)
前述のコラムの写真は解像度が低く、蓋の縦・横がはっきりとわからなかったのだが、lot49sndさんから情報を頂き、この蓋の取っ手は上下ではなく左右に付いていることが判明した。昨年夏には現存していたようだが、2012/02/05に見に行ったところ、既に桜蓋に交換されたあとだった。従って、このタイプの蓋は残念ながらもう現存していないのかもしれない。蓋の写真はlot49sndさんのページ、Clocks & Cloudsで確認できる。
 
 
 
追記(2012/02/21)

ギラリ

ギラリ。夕日を反射し光る蓋。
 
 
 

三河島水再生センター内

同じ様式の蓋。巨大な下水君の角蓋に下水君の丸蓋が乗った親子蓋。ダブル下水君。何れも三河島水再生センター敷地内に設置されている蓋をフェンス越しに撮影。
 
 
 

東京都

上の写真を基に強引に画像変換してみた。横幅は180cm程ありそうだ。
 
 
 
以上、これまで14回に渡って下水君の入った蓋を取り上げてきたが、「蓋」そのものに関しての記事は今回が最後だ。11月にこの企画を始める前にはほぼ全ての下水君蓋を集めた気でいたのだが、その後も新種の発見が相次ぎ、また筆者の知らなかった下水君蓋の情報もたくさん頂いて、この趣味の奥の深さを改めて知ることになった。しかも東京都の下水道の蓋は平成4年と平成13年に大きな設計変更が行われており(桜蓋の登場)、現在路上にある蓋は下水君蓋だけではない。下水道台帳と設計標準とが公開されている下水道の蓋だけでもこれだけの種類があるのに、路上には他にもさらに歴史の古い上水道の蓋や、種類や設計が公にされていないガスや電気の蓋、電話の蓋や通信会社の蓋など様々な蓋があるわけで、地味な蓋ではあるけれどこれを面白いと思えば人生物凄く得をするのではないかと思う。
 
というわけで「蓋」そのものに注目するのは今回が最後だが、下水君100周年記念企画はもう少し続く予定だ。
 
 
 
関連リンク
  ●下水君100周年記念企画01 ~ 東京市型鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画02 ~ 日之出水道機器株式会社
  ●下水君100周年記念企画03 ~ 鉄蓋工業株式会社
  ●下水君100周年記念企画04 ~ 変則東京市型
  ●下水君100周年記念企画05 ~ デザイン蓋
  ●下水君100周年記念企画06 ~ コンクリート蓋
  ●下水君100周年記念企画07 ~ 化粧蓋
  ●下水君100周年記念企画08 ~ L型汚水桝・雨水桝蓋
  ●下水君100周年記念企画09 ~ 汚水桝・雨水桝鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画10 ~ 特殊人孔鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画11 ~ 自働洗滌槽
  ●下水君100周年記念企画12 ~ 燈孔蓋
  ●下水君100周年記念企画13 ~ 中水道
  ●下水君100周年記念企画15 ~ 送泥管
  ●下水君100周年記念企画16 ~ 私設下水道施設檢査證章標、他
  ●下水君100周年記念企画17 ~ 縁石、縁塊等
  ●下水君100周年記念企画18 ~ 鉄蓋虐待
  ●下水君100周年記念企画19 ~ 越境記録
  ●下水君100周年記念企画20 ~ 下水君の親類
  ●下水君100周年記念企画21 ~ 生い立ちの記
 



下水君100周年記念企画 ~ 中水道


東京都 中水道

中水道
 
下水君100周年記念企画の第13回。今回は中水道関連の蓋を取り上げる。写真は中水空気弁の蓋。上水道の蓋と同じ規格で造られているようだが、上水道の蓋では都章が入るべきところに下水君が入っている。
 
「中水」とは、汚水や雨水を処理場で浄化した後、トイレや噴水など人体に触れない目的で再利用するものをいう。上水道でも下水道でもないその中間の水道ということで、「中水道」と呼ばれているが、下水道局の管轄になっているのでその蓋にも下水君が入っている。
 
 
 

東京都 中水道

同じく下水君が入ったやや小型の空気弁の蓋。
 
 
 

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同じく空気弁の蓋だが、少し古い仕様の蓋。
 
 
 

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こちらも少し古い仕様の蓋だと思われる。
 
 
 

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さらに下水君が入った下水仕切弁の蓋もある。こちらも上水道の蓋にそっくりだ。中央に「中水」の文字が入っている。
 
 
 

東京都 中水道

同じく「中水」の文字が入った下水仕切弁の蓋だが、先の蓋と上下逆になっている。
 
 
 

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こちらは「中水」の文字の無いもの。
 
 
 

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さらに下水君のいない蓋もあった。
 
 
 

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こちらは現行の上水道の蓋と同じ規格で造られている下水仕切弁の蓋。
 
 
 

東京都 中水道

中水制水弁と書かれた蓋。下水君ではなく都章(水道局の仕様)が入っているが、中水は間違いなく下水道局の管轄。この蓋が暗に示すのは、下水君、或いは桜マークが入っていなくても下水道局管轄の蓋があること、かな? 再生水管路上には幾つか消火栓もあったが、中には中水を利用しているものもあるのかもしれない。
 
 
 

東京都 中水道

コメントで情報を頂いて追記。鉄蓋工業㈱のL1型の蓋だが、「中水」との表記がある。下水道台帳で該当箇所を調べたところ、これは中水道の空気弁の蓋らしい。北新宿百人町交差点から北に向かって中央線を越える辺りまでの間に、同様の空気弁は4つあるようだ。(うちひとつは桜蓋で、「再生・空」の表記)
 
 
 

たくさん並ぶ下水仕切弁

たくさん並んだ下水仕切弁。落合水再生センターから新宿方面へ伸びる再生水管がこの地下を通っている。
 
 
 

下水仕切弁と中水空気弁

下水仕切弁と中水空気弁。空気弁は「中水」なのに仕切弁は「下水」の表記。ちなみに新しい桜マークの中水道関連の蓋では、「再生水」や「下水再生水」という表記になっている。
 
 
 
関連リンク
  ●下水君100周年記念企画01 ~ 東京市型鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画02 ~ 日之出水道機器株式会社
  ●下水君100周年記念企画03 ~ 鉄蓋工業株式会社
  ●下水君100周年記念企画04 ~ 変則東京市型
  ●下水君100周年記念企画05 ~ デザイン蓋
  ●下水君100周年記念企画06 ~ コンクリート蓋
  ●下水君100周年記念企画07 ~ 化粧蓋
  ●下水君100周年記念企画08 ~ L型汚水桝・雨水桝蓋
  ●下水君100周年記念企画09 ~ 汚水桝・雨水桝鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画10 ~ 特殊人孔鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画11 ~ 自働洗滌槽
  ●下水君100周年記念企画12 ~ 燈孔蓋
  ●下水君100周年記念企画14 ~ その他の蓋
  ●下水君100周年記念企画15 ~ 送泥管
  ●下水君100周年記念企画16 ~ 私設下水道施設檢査證章標、他
  ●下水君100周年記念企画17 ~ 縁石、縁塊等
  ●下水君100周年記念企画18 ~ 鉄蓋虐待
  ●下水君100周年記念企画19 ~ 越境記録
  ●下水君100周年記念企画20 ~ 下水君の親類
  ●下水君100周年記念企画21 ~ 生い立ちの記