森式装鉄コンクリート・ブロック ~ 東京府東京市
東京府東京市(現 東京都区部)
東京都下水道局の旧紋章が入った蓋。この紋章はマンホールのふた 日本篇(林丈二 サイエンティスト社 1984)によると、明治44年10月26日告示の東京市下水改良事務所の紋章が由来とのことだ。さらに下水道局のページには、現在もよく見られるサクラ・イチョウ・ユリカモメのデザインの蓋は平成4年から使われているとの記述があるので、この旧紋章は明治・大正・昭和・平成と長い間利用されていたことになる。従って、この紋章だけから蓋の設置年代を推測することは難しい。因みに、現在使われている管理用の文字キャップ入りの蓋は、同じく下水道局のページによると、平成13年4月から使われているとのことだ。
ただ、今回この蓋で注目すべきは立派な蓋の外側の部分だ。これは「人孔縁塊」と呼ばれるものだ。当時の道路は簡易舗装や砂利道が多かったため、マンホールを補強する目的で設置されていたようだ。下水道展で頂いた資料G&U Vol.3(G&U技術研究センター 2008)のコラムに記述があり、それによると
東京市では道路課も下水課も昭和4年から60cm用の人孔縁塊を使用していた。マンホールに縁塊をつけたのは、簡易舗装の道路か砂利道であったため。東京市芝區田村町にあった明工舎の森勝吉さんが考案したものといわれ、当時の名称は「森式装鉄コンクリート・ブロック」といい、実用新案品だった。
とのことだ。戦中には鉄が不足したはずだし、戦後に作られた道路はまともな舗装になっているので、この蓋は昭和4年から開戦直後あたりまでの短い間、東京市の時代に設置されたものだと思われる。
人孔縁塊のある風景。この蓋は駒込駅前の細い路地で見つけた。ここには2枚残っていた。他にも数は少ないが、都内北部(豊島区・北区・荒川区など)に幾つか残っているようだ。
散歩の続き。東部下水道町村組合の蓋は見つからず、巣鴨まで来た。写真は江戸六地蔵尊のひとつ、地蔵菩薩坐像が安置されている眞性寺。
続いて「とげぬき地蔵」で有名な高岩寺。おばあちゃんの原宿こと巣鴨地蔵通商店街は、いつ来ても活気に溢れている。
本尊のとげぬき地蔵尊は非公開だが、「洗い観音」が境内に立っており、観音様を洗うための長い行列ができている。AEDが設置されている寺というのも珍しいかも。
巣鴨地蔵通商店街の庚申塚側の入り口。明暦3年(1657年)と刻まれた庚申塔があり、猿田彦大神が祀られている。
関連リンク
●この日の管理人のつぶやき(Twitter)
●東京市電氣局(駅からマンホール:2010/07/13)
●東京都区部(駅からマンホール:2007/07/22)
●夢の入口でさん
2010 年 12 月 13 日 11:29 PM
こちらでははじめまして。
人孔縁塊ですが、消去法で行くと年代がわかってくるのですね。納得です。
先日調査した東日暮里と新宿5丁目にも存在していました。多くはないですが、かといってそんなに少ないわけでもなさそうです。徐々に減っているのは事実ですが。
2010 年 12 月 13 日 11:50 PM
まあ、確からしい情報は昭和4年以降の設置ということだけなんですが、それはそうとして、人孔縁塊を含まないこの型の蓋が戦前の設置だとなると、都内に戦前設置の蓋は数多くある(らしい)ことになりますね。
2010 年 12 月 14 日 2:45 AM
「砂利に埋もれるのを防ぐ」のではなく、「砂利で埋めて段差をなくす」が正しいような気がしてきた。
2010 年 12 月 14 日 3:23 AM
いろいろ探した結果、どうやら縁塊(縁鉄・縁石)は舗装を半分かぶせて使うものらしいので、記述を改めました。
2011 年 1 月 23 日 9:20 AM
昨日、渋谷区内(青学付近)にて1基発見しました。
かなり錆が目立ち、蓋はコンクリート製でした。
2011 年 2 月 6 日 12:02 AM
昨日、新宿区歌舞伎町2丁目でも2基発見しました。
鉄蓋、コンクリート蓋各1基。
2011 年 3 月 12 日 1:17 PM
昨日豊島区大塚5丁目でも1枚発見しました。
また、皇居でも1枚確認しています。
この縁塊の所在地マップを路上文化遺産DBに作ってみてはいかがでしょうか。
2011 年 3 月 13 日 4:17 PM
訂正。
皇居→皇居周辺。
2011 年 3 月 21 日 9:20 PM
いろいろと対応すべきことがあったため返事が遅れてしまいすみません。
私もいくつか人孔縁塊の所在地を集めています。結構残っているようですね。
どこかで纏めてみるのも面白いと思います。どのように纏めるのかについてはまだよく考えていないのですが、東京都下水道局のページのさらにサブページあたりが適当ではないかと思っています([[東京都下水道局/人孔縁塊]]のような)。現在サーバの方が節電対応のため不安定ですが、もし可能であれば別途何でもいいので適当な項目を立て編集していただき、後で纏めるという方法でもいいかと思います。
2011 年 9 月 13 日 1:14 PM
人孔縁塊の記事を書くにあたり、こちらの記事へのリンクを張らせて頂きました。