下水君100周年記念企画 ~ 特殊人孔鉄蓋


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特殊人孔鉄蓋
 
下水君100周年記念企画の第10回。今回は○×模様の地紋が可愛らしい特殊人孔鉄蓋を取り上げる。最初の写真は4連の特殊人孔鉄蓋だ。下水君が上や下を向いたり横を向いたりと忙しい。
 
このように、特殊人孔蓋は地味に種類が多く、いきなり写真を並べても判りにくいかと思うので、まず大まかな分類わけをしてみる。

  • 短足(穴?)都章横(旧)
  • 短足穴都章横
  • 短足都章横
  • 短足穴都章縦
  • 普通都章横
  • 普通都章縦
  • 普通都章縦・角丸
  • 普通都章縦・縦長
  • 普通都章縦・饒舌

大まかな分類と言いつつ九つもあり、しかもそれぞれに両端用・中間用の蓋や、さらには亜種まであるので(楽しくて)たまらない。しかも、これで全てを尽くしたという自信もない。
 
とにかく以下、それぞれ見てみよう。
 
 
 

東京市下水道設計標準圖

まずは「短足都章横(旧)」のタイプ。この図は昭和4年発行の東京市下水道設計標準圖に掲載されている特殊人孔鉄蓋詳細図だ。設計図・仕様書での初登場はこの図だと思われるが、登場時から特殊人孔鉄蓋という名前だったようだ。
 
蓋の模様について、最初に掲載した蓋の写真と見比べると、下水君を取り囲むのが○の模様になっており、蓋全体で○と×とが逆になっていることがわかる。実は筆者は、この蓋の実物をまだ見たことがない。マンホールのふた 日本篇(林丈二 サイエンティスト社)でも、仕様書にあるという情報のみで、実物の写真は載っていない。もしかすると既に路上には残っていない蓋なのかもしれない。
 
 
 

東京市下水道設計標準圖

続いて「短足穴都章横」のタイプ。この図は昭和8年に設計標準の設計変更が行われた後に発行されたと思われる東京市下水道設計標準圖に掲載されている。先の図と比べると○×模様の○と×とが逆に並んでおり、下水君は×の模様に囲まれている。都章の中央に穴が開いているようなので「穴都章」と名付けた。このタイプの蓋も、筆者はまだ見たことがない。
 
 
 

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続いて「短足都章横」タイプ。このタイプの蓋は路上でよく見かける。左が両端用の蓋で、右が中間用の蓋だ。両端用の蓋の方がやや幅が広く、左端の×の模様が全て見えている。
 
 
 

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特殊人孔鉄蓋が3枚並んだ様子。両端用の蓋に右端・左端の区別は無いようで、右端の下水君はどうしても逆向き(向かい合った状態)になってしまう。
 
 
 

特殊人孔鉄蓋

首都高速の入り口に設置された特殊人孔鉄蓋。
 
 
 

特殊人孔鉄蓋

円形人孔鉄蓋と特殊人孔鉄蓋のツーショット。特殊人孔鉄蓋は、防潮扉付人孔や楕円形人孔、分水人孔など、文字通り特殊なマンホールに用いられる蓋で、比較的古い時代に多く設置されたようだ。
 
 
 

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こちらは「短足都章横」の亜種といえる蓋。左が両端用、右が中間用の蓋だが、先に紹介した「短足都章横」タイプの蓋と下水君の向きが左右逆になっている。上下ひっくり返せば下水君の向きは同じになるが、話はそう簡単ではない。
 
 
 

下水君  下水君

まず、下水君の比較をしてみる。左は先に紹介した「短足都章横」タイプの蓋の下水君。右は「亜種」とした蓋の下水君だ。亜種の下水君はやや線が細く、中心の都章も小さめだ。そのため下水君全体が比較的スカスカに見える。
 
 
 

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そして、話がそう簡単ではないとしたもうひとつの根拠がこちらの写真だ。両端用の蓋は左右同じもので、両端の下水君はお互いそっぽを向いている。これまで見つけた「短足都章横」の蓋のセットでは、両端の下水君は必ず向かい合った状態で配置されていたのだが、この蓋ではお尻を向け合っている。「短足都章横」と「短足都章横・亜種」の両端用の蓋を組み合わせれば、全ての下水君が同じ向きを向いた配置にすることができるはずだが、そのような組み合わせの蓋はまだ見たことが無い。従って、それぞれ別の年代か別の製造過程で造られた蓋だと想像されるので、「亜種」と分類した。
 
 
 

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続いて「短足穴都章縦」のタイプ。左が両端用で右が中間用の蓋だ。都章の中央に穴(窪み)がある。
 
 
 

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「短足穴都章縦」タイプの両端用の蓋には左右の別があり、右端用と左端用の蓋とが存在する。そのため全ての下水君を同じ向きに揃えることができるはずなのだが、この写真の蓋では中間の蓋が逆を向いてしまっている。実に惜しい。
 
 
 

7連の特殊人孔鉄蓋

「短足穴都章縦」の蓋を使った7連の特殊人孔鉄蓋。
 
 
 

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続いて「普通都章横」タイプの蓋。左が両端用の蓋、右が中間用の蓋だ。東京市型鉄蓋と同じ仕様変更を経ているのだとすれば、普通の都章を用いたこの蓋は昭和44年から使用されているものと思われる。
 
 
 

7連×2列の特殊人孔鉄蓋

水道橋駅近くに設置された7連×2列の特殊人孔鉄蓋。「普通都章横」タイプの蓋はここに14枚使われているが、両端用の蓋はそのうちの4枚だ。4枚とも全て同じ蓋だったので、「普通都章横」タイプの両端用の蓋には右端用・左端用の別は無いようだ。
 
この14枚の蓋に覆われたマンホールは、下水道台帳によると分水人孔となっていた。どういう仕組みで分水するのかは不明だが、ここで分水された汚水(雨水?)は神田川へ合流している。
 
 
 

東京都下水道設計標準

こちらは昭和44年発行の東京都下水道設計標準に掲載されている特殊人孔鉄蓋の図。「普通都章縦」のタイプだ。
 
 
 

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こちらが実物の「普通都章縦」タイプの蓋。左が両端用、右が中間用の蓋だ。
 
 
 

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「普通都章縦」タイプの蓋も「短足都章縦」と同じく、両端用の蓋に左右の別があり、全ての下水君を同じ向きに揃えることができる。
 
 
 

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続いて「普通都章縦」の亜種。
 
 
 

下水君  下水君

違いは下水君の大きさ。「亜種」とした蓋の下水君の方が大きい。大した違いではないが。
 
 
 

6連の特殊人孔鉄蓋

杉並児童交通公園の入り口に設置されている6連の「普通都章縦・亜種」タイプの特殊人孔鉄蓋。
 
 
 

東京都下水道設計標準

続いて現行の東京都下水道設計標準に掲載されている特殊人孔鉄蓋。これは「普通都章縦・角丸」タイプの蓋だ。両端用の蓋の角が丸くなっている。
 
 
 

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実物の「普通都章縦・角丸」タイプの蓋。左が両端用、右が中間用。
 
 
 

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「普通都章縦・角丸」タイプの両端用の蓋についても左右の別があり、下水君を同じ方向に揃えることができる。
 
 
 

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続いて「普通都章縦・縦長」タイプの蓋。この蓋については仕様書に記載は無いので、本当に特殊人孔鉄蓋と分類されるのかどうかは判らない。しいて言えば特殊特殊人孔鉄蓋か?
 
 
 

不忍池

この大きな蓋は不忍池に設置されている。
 
 
 

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最後に「普通都章縦・饒舌」タイプの蓋。この蓋は正式には特殊人孔鉄蓋とは呼ばないようで、現行の仕様書では「人孔鉄蓋(角蓋幅40cm都型)」として掲載されている。(現行の仕様書では下水君ではなく桜模様)
 
 
 

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4連の「普通都章縦・饒舌」タイプの蓋。鉄枠も立派だ。鉄枠についても現行の仕様書に掲載されており、「人孔鉄枠(角蓋用都型)」という正式名もある。
 
 
 

饒舌

反対側も、うかせ、手前に引いて下さい。「饒舌」としたのは、鉄蓋下部にこの説明書きがあるからだ。
 
 
以上、今回は下水君の入った特殊人孔鉄蓋を一通り並べてみた。当初の予想より種類が多く、えらく疲れた。最後に今回取り上げた蓋をもう一度タイプ別に並べてみる。(その後得た情報も反映しています)
 

特殊人孔鉄蓋の分類
タイプ 年代 備考
短足都章横(旧) 昭和4年の設計標準 仕様書のみ?
短足穴都章横 昭和8年以降の設計標準 中間用の蓋の目撃報告がコメント
短足都章横 両端用に左右の別なし、亜種あり
短足穴都章縦 両端用に左右の別あり
普通都章横 昭和44年以降の設置? 両端用に左右の別なし
普通都章縦 昭和44年の設計標準 両端用に左右の別あり、亜種あり
短足都章縦(新) こちらに中間用の蓋の写真がある
普通都章縦・角丸 現行の設計標準 両端用に左右の別あり
普通都章縦・縦長 両端用・中間用の区別なし
普通都章縦・饒舌 現行の設計標準(桜) 両端用・中間用の区別なし

 
 
関連リンク
  ●下水君100周年記念企画01 ~ 東京市型鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画02 ~ 日之出水道機器株式会社
  ●下水君100周年記念企画03 ~ 鉄蓋工業株式会社
  ●下水君100周年記念企画04 ~ 変則東京市型
  ●下水君100周年記念企画05 ~ デザイン蓋
  ●下水君100周年記念企画06 ~ コンクリート蓋
  ●下水君100周年記念企画07 ~ 化粧蓋
  ●下水君100周年記念企画08 ~ L型汚水桝・雨水桝蓋
  ●下水君100周年記念企画09 ~ 汚水桝・雨水桝鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画11 ~ 自働洗滌槽
  ●下水君100周年記念企画12 ~ 燈孔蓋
  ●下水君100周年記念企画13 ~ 中水道
  ●下水君100周年記念企画14 ~ その他の蓋
  ●下水君100周年記念企画15 ~ 送泥管
  ●下水君100周年記念企画16 ~ 私設下水道施設檢査證章標、他
  ●下水君100周年記念企画17 ~ 縁石、縁塊等
  ●下水君100周年記念企画18 ~ 鉄蓋虐待
  ●下水君100周年記念企画19 ~ 越境記録
  ●下水君100周年記念企画20 ~ 下水君の親類
  ●下水君100周年記念企画21 ~ 生い立ちの記
 

この記事へのコメント 5件

  1. 夢の入口で より:

    凄い! 余りにも種類が多くまとめるにもご苦労されたことと思います。
    お疲れ様でした。

    上の記事の中では触れられていませんでしたが、手元にある写真の中に短足都章で横向きで中心部が窪んでいるタイプの蓋も存在します。
    この蓋はどのように考えたらよいでしょうか。

  2. 夢の入口で より:

    追記:中間蓋です。

  3. 駅からマンホール より:

    ここで「短足都章縦」とした下水君が横になったような蓋ですかね。「短足都章横」の亜種としてしまうには違いが大きいような気もしますので、「短足都章」をさらに細かく分類して「短足都章」と「短足中丸都章」などとし、「短足中丸都章横」タイプとするのがよいような気もします。

    大分類では蓋の交換が可能な形状による分類で、「標準(角)」・「角丸」・「縦長」・「饒舌」と分け、中分類では下水君の形状と向きによる分類を加え、小分類では亜種も取り扱う、と考えると整理しやすいかもしれません。それにしても種類が多い、地味に。

  4. アバター画像 駅からマンホール より:

    短足都章としていた下水君を、「短足都章」と「短足穴都章」に分け、最後の表を更新しました。

  5. アバター画像 駅からマンホール より:

    昭和8年(以降)発行の資料の図をよく見たところ、「短足都章横」ではなく「短足穴都章横」だったので、記事を一部改訂しました。

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