犬なのかカピバラなのか、それが問題だ ~ 東京都区部


東京都区部

東京都区部
 
「犬の集会蓋」あるいは「カピバラ蓋」と呼ばれる蓋がある。5匹のかわいらしい動物がエサの乗った一枚の皿を取り囲むように並んでいることからそう呼ばれており、他にも「ワンコ蓋」などと呼ぶ向きもある。
 
敢えて野暮な説明を加えると、実際には都の花「ソメイヨシノ」をデザインしていて、その花びらの穴の部分を目と鼻に、先っぽの部分を耳に見立ててそう呼んでいるだけだ。
 
 
 

動物に見える?

しかし、一度動物に見えてしまうともう花びらには見えなくなってしまうから不思議だ。この動物が犬なのかカピバラなのかという論争は古くからあり、幾度となく激論が交わされてきた。なお、猫に見えるという少数派も存在するが、収拾がつかなくなるので今回は切り捨てて話を勧めさせていただく。
 
 
 

秋田県大館市

秋田県大館市
 
まず犬派の立場に立って、蓋と犬との関係について少し触れておく。犬は馴染みの深い動物であるので、蓋にデザインされることもしばしある。例えば大館市の路上は犬で溢れているし、渋谷にもハチ公の蓋犬にちなんだ蓋が設置されている。桃太郎のお供としてデザインされることもある。
 
 
 

北海道富良野市

北海道富良野市
 
もう一つ、「犬」の字も蓋との関係が深い。「量水器」と書かれた蓋は全国でたくさん見ることができるが、実はこの「器」の字に「犬」が入っている。
 
現在では「大」の字が使われているが、もともとは「犬」が正しく、昭和21年に当用漢字が告示されるまで「器」の字に点を付けたものが正しい文字だった。なおそういった背景から、この「犬」の入った「器」は萌え点として分類されていない。(ところでこの蓋どうやって開けるんだろう?)
 
 
 

北海道富良野市

「器」の字の字源には幾つかの説があるようで、「犬が容器を守る様」、「犬は『様々な』を意味する」(?)、「神に捧げる犬を容器が囲む様」(!)といったものがある。何れにせよ「犬」が関わっている。
 
と、このように蓋と犬とはとても親和性が高いので、例の蓋にデザインされているのも「犬」であろうというのが犬派の意見である。(※個人の感想です)
 
 
 

カピバラ

一方、カピバラ派の意見には、水との親和性が高いのでカピバラとした方が妥当だというものがある。水辺に生息するカピバラこそ、犬よりもデザインされるに相応しいとの意見だ。
 
 
 

カピバラ

また、あれがカピバラだとすると干支が揃うので嬉しいという意見もある。デザイン系マンホール蓋の写真を撮り集めていると、誰しも蓋で十二支を揃えてみたくなると思うが、いきなり最初の「子」で躓いてしまうのだ。端の方にいたり著作権にうるさそうだったりで、これといった蓋が無いのだ。もしデザインされているのがカピバラだとすれば、少し苦しいが「子」の蓋として使えることになる。(※個人の感想です)
 
 
 

犬小屋

ところがある日、重大な発見がなされた。「犬小屋」の発見である。発見したのは神保町のオッカランという雑貨屋さんの店主、ののりこさんだ。2012年6月15日に開催された筆者の案内する髙島屋セミナーの街歩きに参加していただいたのだが、その際に犬・カピバラ論争について触れたところ「ここに犬小屋がある!」と気付かれたのだ。
 
それまで筆者はカピバラ派だったのだが、この事実に抗うことができず、その後は「これは犬です」と説明するようになった。
 
なおオッカランには、ののりこさんが世界各地で選りすぐった素敵な雑貨が並んでいる。神保町へ来たならばおさんぽ神保町を片手にオッカラン、以上、勝手に宣伝させていただきました。
 
 
 

カピバラ小屋

しかし話はそれで終わりではない。あきらめきれなかった筆者は、カピバラの居住環境を確かめるべく、井の頭公園へと探索に出たのだ。そこで見たものはまごうことなきカピバラ小屋であった。
 
 
 

カピバラ小屋

しかも例の蓋にデザインされている小屋にそっくりではないか!この事実を目の当たりにした筆者は、再びカピバラ派となって現在に至る。
 
というわけで、犬カピ論争は未だ終結に至っていない。冒頭で切り捨ててしまったが、猫派の存在も無視するわけにはゆかず、今後も混沌とした議論が続くものと思われる。
 
さてあなたは犬派?それともカピバラ派?
 
 
 

井上水水

話は変わるが、井の頭公園には、何とも井上陽水チックな蓋が設置されていた。
 
 
 

井の頭恩賜公園

井の頭恩賜公園
 
素直に読めば「上水」・「井水」となるが、「井上すいすい」とも読める。また「井水」の「井」は井戸水の「井」なのか、井の頭の「井」なのか、色々と疑問の残る蓋だ。
 
 
 

東京都区部

更に余談。犬カピ蓋は、そのサイズが大きくなるとデザインが変わってしまう。
 
 
 

目がたくさん

犬だ・カピバラだと油断していると、目がたくさんあるようなそのグロテスクな姿に腰を抜かしかねない。筆者はこれはプレデターだと思っていたのだが、遊星からの物体Xだとの向きもあるようだ。だとするとやっぱり犬なのか、結論は見えそうもない。
 
 
 

小型ます鉄蓋表面デザイン詳細図

ちなみに、東京都下水道設計標準には何をデザインしたのかということまでは書かれていない。また写真を撮る際、小屋の部分を下に配置しがちだが、設計図としては用途を記載した部分を下に配置するのが正しい向きのようだ。
 
 
 
関連リンク
  ●東京都区部(駅からマンホール:2008/02/23)
  ●東京都区部(駅からマンホール:2008/12/06)
  ●オッカラン
  ●おさんぽ神保町
 



久しぶりの更新


町自慢、マンホール蓋700枚。

町自慢、マンホール蓋700枚。
 
さて、本当に久しぶりのブログ更新である。丁度2年半ぶりというから恐ろしい。更新が滞ってしまった理由は幾つかあるが、大きな理由はブログを書くことが「大事(おおごと)」と感じるようになってしまったせいかと思う。新しい知見や発見が無いのに記事を書いてもよいものか、それくらいならTwitterで十分ではないかと思うようになり、Twitter上で色々な報告をしているうちにそれで満足するようになってしまった。しかし、すぐに情報が流れてしまうTwitterではなくブログに記事として残すことには意味があるだろうし、Twitterをやっていない読者もおられたかと思うと非常に申し訳なく思う。来年はもう少し気軽にブログを更新するよう努めてみようと思っている。
 
本題。以前よりお世話になっている池上夫妻が新しい本を出された。約5年前、マンホールサミットが初めて開催される際に当ブログでもご紹介した「デザインマンホール100選」が、大幅にパワーアップして帰ってきたのだ。蓋の写真とその説明という構成ではなく、蓋にデザインされているものを実際に見たり体験したうえで、そのご当地の雰囲気をしっかりと織り込んだ構成になっているところが素晴らしく、筆者の目指すところとも共通している。
 
さらに年末にはテレビ出演もあるかもしれないとのご連絡も受けた。番組名は「千鳥の日本で一番しあわせ家族」で、NHK総合にて12月30日(日)の午後7時半からの放送とのことだ。
 
 
 

マンホール壁掛けカレンダー

マンホール壁掛けカレンダー
 
ついでにもう一つ宣伝を。全国の東急ハンズで絶賛発売中の「マンホール壁掛けカレンダー」だが、愛好家が撮影した写真を使っていることが一つの売りとなっており、筆者もその一人として写真を提供させていただいている。筆者にロイヤリティーが入るというようなことは無いのだが、来年以降も継続してほしい企画ではあるので、たくさん売れてほしいと思っている。一時期ネット店舗の在庫が無くなったが、現在は復活しているようなので、よろしければ是非ご購入を。
 
サイズはほぼ原寸大とのことで、壁に掛けるとかなりの迫力だ。この富士市の蓋の写真は筆者による撮影だが、マンホールカードや昨年の卓上カレンダーにも採用していただいており、間違いなく筆者の撮影した写真の中で最も印刷された回数の多い写真であろうと思う。嬉しい限りだ。
 
 
 

地下水道カレンダー

地下水道カレンダー
 
東急ハンズで販売しているカレンダーには「地下水道カレンダー」というものもあり、こちらもお勧めだ。撮影は過去当ブログでも何度かご紹介させていただいている白汚零氏で、本当に美しい地下世界の写真を、毎月楽しむことができる。壁掛用卓上用とがあり、どちらも東急ハンズの実店舗とネット店舗で購入可能だ。
 
 
 

マンホールカレンダーと地下水道カレンダー

なお、昨年も販売されたマンホール週めくりカレンダーは今年も販売されており、机に並べておけば幸福感に包まれつつ仕事や勉強ができることになる。
 
 
 

大阪府和泉市

大阪府和泉市
 
さて、ここからはマンホール壁掛けカレンダーでは残念ながら不採用となってしまった蓋の写真を幾つか紹介してみる。
 
この蓋の写真は2014年の夏に池上氏に案内をしていただきつつ撮ったもののうちの一つだが、その頃からブログの更新が滞りつつあったため、池上氏と一緒に巡った蓋や観光地のほとんどはまだ当ブログに掲載できていない。この蓋にデザインされている「池上・曽根遺跡」ももちろん見学してきたので、近いうちに記事にしたい。
 
 
 

岡山県倉敷市

岡山県倉敷市
 
昨年のマンホールサミットでお世話になった倉敷市の蓋。新倉敷駅の駅前通りにしか設置されていないややレアなタイプ。
 
 
 

東京都福生市

東京都福生市
 
7月はこれしかないと思い、綺麗に掃除してから撮影した蓋だ。カレンダーの企画の話をいただいてから写真の提供まで数日しかないという大急ぎの進行だったが、仕事をさぼって早めに切り上げて撮影したにも関わらず不採用となってしまった。
 
 
 

神奈川県相模湖町

神奈川県津久井郡相模湖町(現 相模原市)
 
「供用開始記念」と書かれたこの蓋は1枚しかなく、一時歴史に埋もれていた蓋でもある。こんな蓋があったはずとの情報を元に大捜索が行われて発見に至った経緯も面白く、何れ記事にしたいと思っている。
 
なお、筆者がカレンダー用の画像を選定する際に、「マンホールカードになっていない蓋であること」という自分ルールを課したのだが、この蓋はその後めでたくマンホールカードにも採用されているようだ。
 
 
 

岩手県石巻市

岩手県石巻市
 
2016年3月に開業した仙石線の新駅、石巻あゆみ野駅前で撮影した蓋。開業の翌日に撮影したので、蓋も新しい。
 
 
 

埼玉県狭山市

埼玉県狭山市
 
筆者の大好きな消火栓の蓋。この蓋の下に格納されているであろう「単口消火栓」そのものがデザインされている。これほどマニアックなデザインの蓋は他に無いのではなかろうか。なお「双口消火栓」や「空気弁」をデザインした蓋もあり、それらを含めて改めて記事にしたいと思っている。
 
 
 

青森県下田町

青森県上北郡下田町(現 おいらせ町)
 
今回の企画には不向きかと思いつつも候補に入れた、雪化粧をした蓋。お気に入りの一枚。
 
 
 

東京都調布市

東京都調布市
 
今年話題となった蓋の一つ。とあるテレビ番組で紹介させていただいたのだが、演出がやや過ぎていた部分もあり、自分の意志を強く持つことを改めて勉強させていただいた。色々な意味で思い入れの深い蓋だ。
 
 
 

木之元神社

木之元神社
 
こちらも大好きな蓋なので、サイズ的に今回の企画には不向きと思いつつも入れてみた。歩道の下に隠されてしまった神聖な井戸を守るための蓋だ。
 
 
 

網走土木現業所

網走土木現業所
 
下水道に縛られる必要はないかと思い候補に入れた蓋の一つ。周りを取り囲む草ごとカレンダーにしてみても面白そうだと思ったが、不採用となった。
 
 
 

神奈川県相模原市

神奈川県相模原市
 
かっこいいデザイン、それに尽きる。照り返しの部分を含めて好きな写真なのだが、今回の企画には不向きだったようだ。
 
 
 

長野県白馬村

長野県北安曇郡白馬村
 
構図と色遣いが美しい蓋だ。この蓋とその景色をまた見に行きたいと思わせるデザインはそうそうない。次はカタクリが咲いている時期に行ってみたいと思っている。
 
 
 

長野県白馬村

同じく白馬村の蓋。刻々と表情の変わる山の姿を表現しているようで、こちらの蓋もお気に入りの一枚だ。
 
 
以上、壁掛けカレンダーに不採用となった蓋の写真を紹介してみたが、どの蓋も捨てがたく思い入れのあるものばかりだ。また、久しぶりにブログを書いてみて、写真を撮った時の状況を思い出すにあたり、この趣味の楽しさを改めて感じている。
 
冒頭にも書いたが、来年はもう少し気軽に、頻繁にブログの更新をしたいと思っているので、読者の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。どうぞよい年をお迎えください!
 
 
 
関連リンク
  ●町自慢、マンホール蓋700枚。(論創社)
  ●マンホール壁掛けカレンダー(東急ハンズ)
  ●マンホール週めくりカレンダー(東急ハンズ)
  ●地下水道カレンダー(壁掛)(東急ハンズ)
  ●地下水道カレンダー(卓上)(東急ハンズ)
 



岡元ではなく大元 ~ 大阪電気暖房株式会社


大阪電気暖房株式会社

大阪電気暖房株式会社(現 ダイダン株式会社)
 
なかなかカッコイイ紋章が中央に入った蓋。この蓋は東京都文京区本駒込、六義園に隣接したマンションに設置されていた。この紋章の蓋は関西で比較的よく見かけられるようだが、設置者や製造者が判明せず、長らく謎の蓋として扱われてきた。
 
 
 

大阪電気暖房株式会社

こちらは愛知県豊橋市内で見つけた蓋。下部に「O.D.D.K.」の文字が入っている。これにより紋章の上下も判断可能で、最初の文字は「お」であることが想像された。
 
 
 

大阪電気暖房株式会社

紋章とにらめっこをすると「岡元」と読めることから、岡元で始まる浄化槽を扱う会社を探したところ、大阪市港区に本社のある株式会社岡元工業所という会社が見つかった。さらにその工場をストリートビューで探したところ似た地紋の鋳物が転がっていたため、ほぼ間違いないだろうと判断したのだが、その後実際に岡元工業所へ連絡をされた方がおり、違うという返事だったそうで再び謎蓋に戻ってしまった。(これは鋳物ではなく、プロパンガスのボンベを置くゴム製の台座のようだ)
 
 
 

大阪電気暖房株式会社

しかしその後、マンホールナイト写真コンテストの初代大賞受賞者の安部さんのサイトお散歩 Photo Albumに大阪電気暖房の蓋ではないかという情報が載り、さらに日本マンホール蓋学会さんのサイトで裏付けまで行われ、この紋章は大阪電気暖房のものであることが確実となった。紋章の上部は逆さまの「大」の字で、下部は創業者の菅谷元治氏の「元」の字を使っているようだ。「O.D.D.K.」も、大阪電気暖房株式会社の略であると考えればスッキリする。「岡」と「大」、どちらも「お」で始まるが、そのせいでだいぶ遠回りをしてしまった。
 
紋章の使用期間や社名変更の時期などについてはそれぞれのサイトに詳しく書かれているのでそちらを参照していただきたい。また、創業者の菅谷元治氏と会社創業の背景については、イタンデイコウ!さんのサイトに詳しく書かれている。
 
 
 

大阪商工同業名鑑 金属品之部 大正14年度

これだけでは何となく悔しいので、国立国会図書館デジタルコレクションを探してみたところ、大阪商工同業名鑑 金属品之部 大正14年度に、社名変更前の合資會社大阪電氣商會大阪暖房商會が見つかった。現在のダイダン株式会社の社歴のページによると、株式会社大阪電気商会大阪暖房商会の設立は昭和8年10月で会社自体の設立(株式会社へ改組)もこの年となっているが、少なくとも大正14年の時点で大阪電気商会大阪暖房商会の社名を使っていたことが分かる。(ネット上で確認できる情報によると、前身の村井菅谷営業事務所から大阪暖房商会に改組されたのは大正4年)
 
電燈電力電話工事請負・暖房、衛生通風工事請負、大阪市西区江戸堀南通に所在し電話は土佐堀局。蓋を通して、一方的ではあるがずいぶんと親近感が増した。
 
 
 
 
追記(2016/10/07)
 

国立国会図書館デジタルコレクション:建設年鑑 昭和3年度版

もう一つ見つけた。
 
 
 
関連リンク
  ●ダイダン株式会社
  ●お散歩 Photo Albumさん
  ●日本マンホール蓋学会さん
  ●送水口倶楽部さん
  ●イタンデイコウ!さん