送水口ウォーク・中編


日本橋一丁目ビルディング

送水口ウォーク・中編
 
春分の日に開催された送水口ウォークの中編。前編で参加者一行は比較的規模の小さな建物に付属する送水口を見て回り送水口の基礎を学んだが、次第に日本橋の中心街、規模の大きな建物が並ぶ区域に進んだ。この写真は2004年竣工の日本橋一丁目ビルディング(COREDO日本橋)の送水口と採水口だ。連結送水管送水口が4口、スプリンクラー設備用の送水口が中層用(4F~20F)・低層用(B4F~3F)各2口ずつの計4口、採水口が2口並んでいる。さらに左右にはインターホンや無線機の接続端子、ケーブル取出口など、消火作業に必要なものが1か所に纏められている。これぞ機能美。
 
スプリンクラー設備用の送水口は今回の送水口ウォークでは初めての登場だ。ここから送水すると建物内のスプリンクラーから放水される仕組みになっているが、基本的には地下街や地下階の消火の為に設置されるものなのだそうだ。
 
 
 

旭洋ビル

永代通りを渡り1961年竣工の旭洋ビルへ。写真左に「送水口(連結散水設備用)」と書かれたスタンド型の送水口が、右奥には壁埋設型の連結送水管送水口が設置されている。連結散水設備とはスプリンクラーのことで、階数や区画毎に複数の連結散水設備送水口があることを示すプレートも設置されている。
 
 
 

旭洋ビル

建物の別の面に回ると確かに別の連結散水設備送水口が設置されていた。こちらは壁埋設型だ。
 
 
 

旭洋ビル

さらに別の送水口も3組。この建物には、連結送水管送水口(壁埋設型)、連結散水設備送水口(スタンド型、地下2階用)、連結散水設備送水口(壁埋設型、地下1階用・4組)と、4か所に計6組の送水口が設置されていることになる。冒頭に掲載した日本橋一丁目ビルディングの送水口と比べると機能性に劣るが、逆に言えば年を追うごとにより進化していることがよくわかる。
 
 
 

(廃道)再開発反対

途中「(廃道)再開発反対」との看板が掲げられた建物があった。高度成長期の時代に迷い込んだようだ。この辺りは今月より大規模な再開発が始まっており、先月開催の送水口ウォークではこの街並みの最後の姿を見て回ったことになる。
 
 
 

地下配管図

この写真は今年の2月初めに撮影したものだが、今回同じ道を歩いた。絵心があって面白いが、それ以上に地下に様々なものが埋設されていることに今更ながら驚かさされる。
 
 
 

NTT東日本

NTTの蓋からは T と書かれた管がたくさん伸びている。T は Telephone のことだと想像される。電話だけで7本の管がここに埋設されていることが蓋を開けなくても見て取れる。
 
 
 

日本橋髙島屋 新館

箱入の送水口。
 
 
 

日本橋髙島屋 新館

この送水口は日本橋髙島屋新館のもの。髙島屋セミナーの第1回マンホール講座はこの建物で開催されたので、筆者にとっては馴染み深い場所だが、この建物も再開発に伴い取り壊されることが決まっている。
 
 
 

日本橋髙島屋 新館

この送水口の中で目を引くのは、右端にある「ドレンヂャー送水口」と表記されているものだ。「ジ」ではなく「ヂ」を用いる表記は珍しいが、この「ドレンヂャー」を英語で表記すれば drencher となり、正確には「ドレンチャー」と表記すべきものらしい。drencher は「どしゃ降り」の意味を持つ単語で、消火設備としては建物の外壁や駐車場・通路の天井等に設置し、水幕を使って防火扉のように延焼を防ぐものを言うらしい。
 
 
 

太陽生命ビル

お隣の太陽生命ビルの送水口。こちらで目を引くのは「防火栓」との表記だ。実は蓋にも「防火栓」と表記されたものが幾つかあるのだが、この「防火栓」という表記は様々な使われ方がされている(いた)ようで、定義がいまいちよくわからないでいる。この写真の防火栓は採水口と同じ意味で使われているようだが、上水道に接続されたいわゆる消火栓と同じ意味で使われていると思われる場合もある。規模の大きい防火貯水槽に接続された採水設備、或いは上水道ではなく消防用の水道(防火水道)に接続された採水設備を「防火栓」と呼ぶのだとすれば今のところ辻褄は合うように思うが、確かな定義ではない。どうであれ古い設備によく見られる表記のようだ。
 
 
 

太陽生命ビル

同じ建物に単口の送水口もあった。前編では単口の送水口は規定外のものだと書いたが、それは連結送水管送水口についての話で、スプリンクラー(連結散水設備)用の場合では、その形状や数によっては単口の送水口も用いられることがあるのだそうだ。スプリンクラーについては、連結送水管送水口のように法令による設置義務は元々無かったようで(法令では設置義務ではなく設置基準といった表現が多い)、比較的緩い運用がなされているようだ。とは言っても単口のものは珍しい。
 
他に規定外ではない(正当な)単口の送水口の例として、水圧を利用してシャッターを開ける水圧開放装置(水圧シャッター送水口)といったものも存在する。(水圧を利用するといっても油圧ジャッキのように直接水圧を利用するわけではなく、水圧で非常電源・蓄電池のスイッチを入れたり、同じく水圧でタービンを回し発電させてシャッターを開ける方式)
 
 
 

太陽生命ビル

同じ建物の別の面にも送水口・防火栓・水噴霧用(スプリンクラー用)送水口のセットがあった。
 
 
 

古い街並み

近くには古い街並みもまだ残っていた。この辺りも今月から始まった再開発の対象地域で、どの店も閉店していた。
 
 
 

日本橋料理・飲食業組合章

そんな店の入り口に釘付けされた「日本橋料理・飲食業組合章」。なかなか趣があってよろしい。
 
 
 

坂下工務所

坂下工務所
 
この一角にある髙島屋の駐車場にこの蓋はある。右書きで古い形式の電話番号(電話下谷(83)五七六九番)も入っている。異体字の「務」の字、屋号の「ヤマサ」、見どころが多い蓋だ。恐らく浄化槽の蓋ではないかと思われる。残念ながらこの駐車場も再開発の対象地域なので、そろそろ撤去されてしまうはずだ。
 
 
 

三機工業株式会社

三機工業株式会社
 
上の坂下工務所の蓋のすぐそばにこの蓋もある。三機工業は三井グループの総合設備建設会社で、浄化槽工事も手掛けている。
 
 
 

三機工業株式会社

すぐ近くの建物にも三機工業の蓋があった。三井のシンボルマークは「丸に井桁三」で、井戸(4画)に「三」をあしらったものだが、三機工業の場合は本家に遠慮して三角井戸に「三」というのが面白い。
 
 
 

サイヤミーズ コネクシヨン

「送水口」ではなく「サイヤミーズ コネクシヨン」と表記された送水口。コネクションではなくコネクシン。片仮名の小さな「ャ」「ュ」「ョ」といった表記が一般に用いられるようになったのは戦後暫くしてからということらしいので、これもその名残だと思われる。サイヤミーズ(Siamese)とは「シャム(タイ王国の旧名)の」という意味だが、この送水口がシャム由来というわけではなく、シャム双生児から「双口」の連想でこう呼ばれているらしい。Wikipediaにもそう記載がある。
 
 
 

三機工業株式会社

この送水口も三機工業の製品だ。
 
 
 

日本橋髙島屋

向かいは日本橋髙島屋の本館。シャネル、エルメス、タイユヴァン(ワイン)といった有名ブランドの室外機が並ぶ。各ブランドの製品というわけではなく、各売り場のエアコンに繋がっている室外機、だよね。
 
 
 

日本橋髙島屋

その日本橋髙島屋本館に設置されている送水口。壁埋設露出Y型の送水口だが、色つやといい形状といい、何というか艶めかしい。
 
 
 

ぐりぐり写真:日本橋髙島屋の送水口
{“src”:”http://EkikaraManhole.WhiteBeach.org/images/2014.04.10.0/t.jpg”,”width”:”540″,”height”:”445″}

折角なのでぐりぐり写真にしてみた。なんだかちょっと恥ずかしいような、いけないことをしているような気分になる。(ぐりぐり写真: 写真にマウスカーソルを乗せると動かせる)
 
 
 

村上製作所

この送水口に付いている「M」の字をモチーフにしたようなマークについて、比較的古い送水口によく見られるマークだが詳細が分かっていないとのことだった(上記太陽生命ビルの送水口にも同じマークが付いている)。しかしつい昨日、その正体が判明したとの報告が送水口ウォーク主催者のAyaさんよりあった。
 
報告によると、このマークは「村上製作所」のものとのことだ。村上製作所といっても複数存在するので企業情報DBを当たってみたところ、消防・水道用機械器具及び同関連部品の製造・販売を行っている会社として、新橋2丁目に本社のある㈱村上製作所が浮上した。村上製作所の創業は昭和10年とのことだが、日本橋髙島屋本館の竣工は昭和8年なので微妙に合っていない。送水口のヘッド部分が後付けという可能性や、企業情報DBに誤りがある可能性、或いは現存しない別の村上製作所が存在した可能性などが考えられるが、こういった謎解きも面白い。
 
追記(2014/04/14)
畏れ多くもメールで直接問い合わせてみたところ、間違いなく新橋2丁目の村上製作所さんの製品であることが判明した。水口を自由に回転できる蛇口(上に向けて直接水が飲めるような蛇口)の考案者でもあるらしい(村上式自在水栓)。
 
 
 

「電」蓋

日本橋髙島屋周辺に設置されていた蓋。主に電電公社NTTの蓋に使われるT字地紋に、「電」の字が入っている。「電」だけだと電気なのか電話なのか判別できないが、T字地紋なので電話の蓋ではないかと思われる。ただ、なぜ通常の電電公社やNTTのマークが入った蓋が使われていないのか疑問が残る。
 
 
 

「話」蓋

余談だが日本橋の近所、兜町には「話」の蓋もあったりする。「電」の蓋と組み替えてみたいところだ。
 
 
 

「〇」蓋

「電」の蓋の並びに設置されている「〇」蓋。
 
 
 

「〇」蓋

よく見ると元々文字が入っていてそれを潰したように見える。どこかで見たことがあるような気もしたが、該当する蓋はコレクションには見つからなかった。どこかで見たことがあるような気がした理由は後述する。
 
 
 

「〇」蓋

こちらの蓋も兜町周辺に設置されている蓋だが、上記のものとは似ているようで別物だ。
 
 
 

「〇」蓋

中央を拡大。中心の丸が無く、何となくいびつだ。
 
 
 

「〇」蓋

こちらは日本橋、昭和通り沿いにある蓋だが、途切れた「〇」の蓋。
 
 
 

「〇」蓋

これは電電公社のTTSマークを削って作ったマークのようだ。明らかな虐待蓋。先の途切れていない「〇」の蓋のマークもよく見ると、途切れた部分をあとから埋めて「〇」にしたように見える。
 
詳細は分からないが、日本橋・兜町周辺には電電公社の消したい過去が存在するようだ。電電公社の管轄ではない電話・通信関連のインフラがあるのかもしれない。
 
 
 

建設省・日本電信電話公社

建設省(現 国土交通省)・日本電信電話公社(現 NTTグループ)
 
似た「〇」の蓋として、建設省の共同溝の蓋が挙げられる。
 
 
 

建設省・日本電信電話公社

「建設省共同溝・日本電信電話公社電線路」と書かれているようだが、文字は「〇」の上ではなく「〇」の外側に凸で鋳出されている。先に掲載した文字を潰したような跡の残る「〇」の蓋を見たとき、元はこの蓋(の仲間)ではないかと思ったのだが、どうやら違うようだ。
 
 
 

送水口ウォーク・中編

国土交通省東京電力株式会社
 
ついでなので国土交通省の「〇」蓋も。
 
 
 

国土交通省・東京電力株式会社

こちらの蓋には「国土交通省共同溝・東京電力地中電線路」と書かれている。建設省・電電公社の蓋の地紋がT字地紋であったのに対し、こちらの蓋の地紋は電力っぽい地紋なのも面白い。
 
 
 

東大レゴ部 日本橋髙島屋

おまけ。2011年の年末に日本橋髙島屋に展示されていた、レゴブロックによる「日本橋髙島屋」。東大レゴ部の作品。
 
 
だいぶ脱線してしまったが、中編はここまで。後編に続く。
 
 
 
関連リンク
  ●送水口ウォーク・前編(駅からマンホール:2014/03/30)
  ●送水口ウォーク・後編(駅からマンホール:2014/04/21)
  ●消防車特集(余談編1)(駅からマンホール:2014/05/19)
  ●地下式送水口特集(余談編2)(駅からマンホール:2014/06/13)
  ●馬明の路上文化遺産と投資のブログさん
  ●送水口倶楽部さん
  ●路上散歩備忘録さん
  ●送水口ウォーク まとめ(togetter)