送水口ウォーク・後編


日本橋髙島屋

送水口ウォーク・後編
 
春分の日に開催された送水口ウォークのレポート最終回(前編中編)。写真は日本橋髙島屋の送水口。中編ぐりぐり写真にした送水口とは反対側の面に設置されている送水口で、こちらには「連結送水管」と書かれたプレートが剥がれずに残っている。
 
 
 

村上製作所 村上製作所

中編にも追記したが、この送水口に付いているマークについて、ここではないだろうかという会社に畏れ多くもメールで直接問い合わせてみたところ、新橋2丁目の㈱村上製作所さんの製品であることが判明した。創業は昭和10年で、水口を自由に回転できる蛇口(上に向けて直接水が飲めるような蛇口)の考案者でもあるらしい(村上式自在水栓)。同じマークが入った貴重な資料も頂いてしまった。感謝感激だ。
 
 
 

建設省

建設省(現 国土交通省)
 
周辺の道路では、建設省のマークが入った大きい蓋が目に留まった。「建設省・共同溝」とある。
 
 
 

日本橋共同溝

送水口ウォークでは立ち寄らなかったが、日本橋駅の出口、髙島屋地下入口の脇に、その共同溝の覗き窓がある。
 
 
 

日本橋共同溝

案内板によると日本橋室町3丁目から日本橋川を越え、京橋3丁目まで続いているのだそうだ。実を言うと髙島屋だけではなく三越の地下にも同様の覗き窓があったのだが、残念なことに改修工事で無くなってしまった。
 
他に同じ中央通りの少し先、銀座の地下には銀座共同溝があり、これと同様の覗き窓が松屋銀座本店の地下に現存する。銀座共同溝は昭和43年、日本橋共同溝は昭和47年の完成だが、この頃のデパートは挙って共同溝の覗き窓を設置していたことになる。
 
 
 

自働洗滌槽

東京府東京市(現 東京都区部)
 
髙島屋周辺で見ておくべき蓋として、この自働洗滌槽の蓋も忘れてはならない。有孔蓋(上)と無孔蓋(下)とで構成され、「自働洗滌槽」の文字が入る無孔蓋の下には大きな水槽と装置とが設置されている(現存するかどうかは不明、台帳上は矩形人孔)。内部構造と仕組みについてはこちらの記事を参照されたし。
 
 
 

自働洗滌槽

ただこの蓋は髙島屋脇のタクシー乗り場に続く道にあるため、常にタクシーが列をなしており、髙島屋の営業時間内にその姿を確認することが大変難しい。先に掲載した蓋の写真は、早朝、開店前に撮影したもので、タクシーも人通りも無かったので背伸びしたりガードパイプによじ登ったりと頑張り、2枚の蓋を真上から1枚の写真に収めることができた。上の写真は営業時間内だが奇跡的にタクシーの列が途絶えた瞬間に撮影した。このあとすぐタクシーがやってきてこの蓋をまた隠してしまった。
 
 
 

新日本橋ビルディング

通りの反対側、新日本橋ビルディングの採水口(手前)と送水口(奥)。送水口は地上50cm以上1m未満の位置に設置することになっているのだが、この送水口は頭の部分がギリギリ50cmあるかどうかの高さ。個性的な送水口とも言える。チェーンロックで蓋の鎖を繋ぎ止めている。
 
 
 

新日本橋ビルディング

その新日本橋ビルディングの定礎。「昭和丗五年五月」と書かれている。「」は「三十」のことなので昭和35年5月と読めるのだが、疑問が残る。Ayaさんによると、スタンド型という送水口の形状から昭和35年とは考えにくく、昭和45年頃であれば納得がゆくとのことだった。賃貸オフィス情報サイトでも竣工は1960年(昭和35年)11月とされているので、建物自体は昭和35年のもので間違いなさそうだ。とすると、このビルの送水口は後日更新されたものか、非常に初期のスタンド型送水口ということになる。
 
 
 

日本橋通りビル

日本橋通りビルの送水口。錆び具合のせいか金属なのに柔らかい質感。ドラえもんが金属でできているのならこんな感じになるのではなかろうか。
 
それはともかく注目すべきは「サイアミーズコネクシヨン」の表記。中編にも「サイミーズコネクシヨン」が出てきたが、サイヤミーズ(Siamese)とは「シャムの」という意味で、シャム双生児から「双口」の連想でこう呼ばれているという。しかし世の中には単口なのに「サイアミーズコネクシヨン」と表記された送水口も存在するそうで、本来の「双口」の意味がどこかで「送水口」そのものを指す言葉になってしまったのではないかとのことだった。
 
 
 

第二中央ビル

外蛇口とのコラボ。外蛇口だけではなく、建物が送水口に合わせて切り取られていたり、外れた蓋が下に置かれていたり、昔はしっかりした蓋と繋がっていたであろう鎖が所在なげにぶら下がっていたり、ペットボトルを利用して防水処理?されたコンセントがあったりなど、実に見どころが多い。生活感溢れる送水口だ。
 
 
 

手書き送水口

手書きの送水口プレート。木でできた何かの箱の、蓋の部分を利用しているようだ。「送」の字が二点しんにょうだったら尚良し。
 
 
 

お供え物

頭が平らなスタンド型の送水口は物を置きやすく、空き缶や落し物など様々な物が置かれていることがあるという。送水口愛好家の間では「お供え物」と表現するそうで、写真は自転車の鍵が「お供え」されている様子。ずいぶん前からこの状態なのだそうだ。
 
 
 

村木ビルディング

美しい単口送水口に片思いする散水栓の図。
 
 
 

くりはらビル

露出Y型、文字盤だいぶ斜め。
 
 
 

くりはらビル

別角度から。送水口は3次元的に楽しめる。「升に『KS』」の屋号が見えるが、これは東京都墨田区緑4丁目に所在した岸本産業㈱の製品ということらしい。戦前、昭和16年の創業で、このマークの入った送水口は多数現存しているのだが、残念ながら会社は2001年~2004年のどこかで消滅してしまったようだ。
 
 
 

日本橋八重洲デュープレックスポーション

立派な箱に納められているように見える送水口。
 
 
 

日本橋八重洲デュープレックスポーション

でも横から見ると板だけだった。こちらは㈱横井製作所㈱立売堀製作所の製品とのことだ*。同社製品はこのタイプの施工が多いとか。
 
 
 

八重洲中央ビル

交差する送水口。手前のスタンド型送水口は日本橋MMビル、奥の埋設型だけど露出している送水口は八重洲中央ビルのもの。ここでの注目点は現役の送水口ではなく遺構となった送水口だ。
 
 
 

八重洲中央ビル

スタンド型送水口と何か(採水口?)の遺構が並んでいる。踏んだら祟られるかも。
 
 
 

ニュー八重洲ビル

高い建物が多いので送水口が次から次に出てくる。これは折角建物にカッターを入れたのにちょっとずれているのが悲しい。
 
 
 

三菱ビルディング

こちらは饂飩屋さんの外装に合わせて綺麗に化粧された送水口。
 
 
 

三菱ビルディング

でも本来壁に打ち込まれるはずの金物がそのまま放置されている。お茶目系?
 
 
 

アイ・アンド・イー日本橋ビル

縦に4つ並ぶ送水口。こちらも箱に綺麗に納められている。
 
 
 

ブリヂストン本社ビル

遂に今回の送水口ウォーク最後の物件。ブリヂストン本社ビルの送水口で、Ayaさん曰く「日本の至宝」。手前の露出Y型の送水口は「SIAMESE CONNECTION」、奥の採水口は「WALL HYDRANT」と表記されている。さらに奥には壁埋設型のスプリンクラー送水口も設置されている。「升に『CEC』」の屋号が入っているが、これは㈱建設工業社の製品とのことだ。建設工業社は大正10年創業の老舗だ。
 
 
 

ぐりぐり写真:ブリヂストン本社ビル
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色合いといい形状といい、何とも素敵だ。どこかで見たことがあるような気がしたのだが、キングジョーかな?。(ぐりぐり写真: 写真にマウスカーソルを乗せると動かせる)
 
 
というわけで、前編中編と続いた送水口ウォークのレポートも、この「日本の至宝」をもって最後となる。日本橋周辺は何度も歩いたはずなのに、送水口は全くと言っていいほど目に入っていなかったことを痛感した。逆に、筆者が日本橋周辺で街歩きをやるのであれば必ず盛り込むであろう見所には殆ど触れずに終了した。それでいて非常に濃い街歩きができるのだから、街歩きは本当に奥が深い。今後はより多面的に街を見ることができそうだ。
 
マンホール蓋と送水口、観察・鑑賞するうえでその違いを挙げるとするなら、送水口は3次元的な鑑賞ができ、さらに建物毎に個性があるので同じ街の一区画でも様々な種類の物件を一度に見ることができる点だろうか。マンホール蓋は、同じ用途であれば自治体単位で基本的に同じ形をしているので、少し歩いただけで新しい発見はそうそう出てこない。
 
 
 

送水口に見える

副作用として、丸が二つあると送水口に見える病に罹患してしまったようだ。これも送水口に見えてしまう。丸い標識の影や水溜りがマンホールの蓋に見えてしまう病気と似ている。
 
 
 
送水口ウォークのレポートは以上だが、余談編に続く予定。
 
 
 
関連リンク
  ●送水口ウォーク・前編(駅からマンホール:2014/03/30)
  ●送水口ウォーク・中編(駅からマンホール:2014/04/10)
  ●消防車特集(余談編1)(駅からマンホール:2014/05/19)
  ●地下式送水口特集(余談編2)(駅からマンホール:2014/06/13)
  ●送水口倶楽部さん
  ●路上散歩備忘録さん
  ●送水口ウォーク まとめ(togetter)
 



送水口ウォーク・中編


日本橋一丁目ビルディング

送水口ウォーク・中編
 
春分の日に開催された送水口ウォークの中編。前編で参加者一行は比較的規模の小さな建物に付属する送水口を見て回り送水口の基礎を学んだが、次第に日本橋の中心街、規模の大きな建物が並ぶ区域に進んだ。この写真は2004年竣工の日本橋一丁目ビルディング(COREDO日本橋)の送水口と採水口だ。連結送水管送水口が4口、スプリンクラー設備用の送水口が中層用(4F~20F)・低層用(B4F~3F)各2口ずつの計4口、採水口が2口並んでいる。さらに左右にはインターホンや無線機の接続端子、ケーブル取出口など、消火作業に必要なものが1か所に纏められている。これぞ機能美。
 
スプリンクラー設備用の送水口は今回の送水口ウォークでは初めての登場だ。ここから送水すると建物内のスプリンクラーから放水される仕組みになっているが、基本的には地下街や地下階の消火の為に設置されるものなのだそうだ。
 
 
 

旭洋ビル

永代通りを渡り1961年竣工の旭洋ビルへ。写真左に「送水口(連結散水設備用)」と書かれたスタンド型の送水口が、右奥には壁埋設型の連結送水管送水口が設置されている。連結散水設備とはスプリンクラーのことで、階数や区画毎に複数の連結散水設備送水口があることを示すプレートも設置されている。
 
 
 

旭洋ビル

建物の別の面に回ると確かに別の連結散水設備送水口が設置されていた。こちらは壁埋設型だ。
 
 
 

旭洋ビル

さらに別の送水口も3組。この建物には、連結送水管送水口(壁埋設型)、連結散水設備送水口(スタンド型、地下2階用)、連結散水設備送水口(壁埋設型、地下1階用・4組)と、4か所に計6組の送水口が設置されていることになる。冒頭に掲載した日本橋一丁目ビルディングの送水口と比べると機能性に劣るが、逆に言えば年を追うごとにより進化していることがよくわかる。
 
 
 

(廃道)再開発反対

途中「(廃道)再開発反対」との看板が掲げられた建物があった。高度成長期の時代に迷い込んだようだ。この辺りは今月より大規模な再開発が始まっており、先月開催の送水口ウォークではこの街並みの最後の姿を見て回ったことになる。
 
 
 

地下配管図

この写真は今年の2月初めに撮影したものだが、今回同じ道を歩いた。絵心があって面白いが、それ以上に地下に様々なものが埋設されていることに今更ながら驚かさされる。
 
 
 

NTT東日本

NTTの蓋からは T と書かれた管がたくさん伸びている。T は Telephone のことだと想像される。電話だけで7本の管がここに埋設されていることが蓋を開けなくても見て取れる。
 
 
 

日本橋髙島屋 新館

箱入の送水口。
 
 
 

日本橋髙島屋 新館

この送水口は日本橋髙島屋新館のもの。髙島屋セミナーの第1回マンホール講座はこの建物で開催されたので、筆者にとっては馴染み深い場所だが、この建物も再開発に伴い取り壊されることが決まっている。
 
 
 

日本橋髙島屋 新館

この送水口の中で目を引くのは、右端にある「ドレンヂャー送水口」と表記されているものだ。「ジ」ではなく「ヂ」を用いる表記は珍しいが、この「ドレンヂャー」を英語で表記すれば drencher となり、正確には「ドレンチャー」と表記すべきものらしい。drencher は「どしゃ降り」の意味を持つ単語で、消火設備としては建物の外壁や駐車場・通路の天井等に設置し、水幕を使って防火扉のように延焼を防ぐものを言うらしい。
 
 
 

太陽生命ビル

お隣の太陽生命ビルの送水口。こちらで目を引くのは「防火栓」との表記だ。実は蓋にも「防火栓」と表記されたものが幾つかあるのだが、この「防火栓」という表記は様々な使われ方がされている(いた)ようで、定義がいまいちよくわからないでいる。この写真の防火栓は採水口と同じ意味で使われているようだが、上水道に接続されたいわゆる消火栓と同じ意味で使われていると思われる場合もある。規模の大きい防火貯水槽に接続された採水設備、或いは上水道ではなく消防用の水道(防火水道)に接続された採水設備を「防火栓」と呼ぶのだとすれば今のところ辻褄は合うように思うが、確かな定義ではない。どうであれ古い設備によく見られる表記のようだ。
 
 
 

太陽生命ビル

同じ建物に単口の送水口もあった。前編では単口の送水口は規定外のものだと書いたが、それは連結送水管送水口についての話で、スプリンクラー(連結散水設備)用の場合では、その形状や数によっては単口の送水口も用いられることがあるのだそうだ。スプリンクラーについては、連結送水管送水口のように法令による設置義務は元々無かったようで(法令では設置義務ではなく設置基準といった表現が多い)、比較的緩い運用がなされているようだ。とは言っても単口のものは珍しい。
 
他に規定外ではない(正当な)単口の送水口の例として、水圧を利用してシャッターを開ける水圧開放装置(水圧シャッター送水口)といったものも存在する。(水圧を利用するといっても油圧ジャッキのように直接水圧を利用するわけではなく、水圧で非常電源・蓄電池のスイッチを入れたり、同じく水圧でタービンを回し発電させてシャッターを開ける方式)
 
 
 

太陽生命ビル

同じ建物の別の面にも送水口・防火栓・水噴霧用(スプリンクラー用)送水口のセットがあった。
 
 
 

古い街並み

近くには古い街並みもまだ残っていた。この辺りも今月から始まった再開発の対象地域で、どの店も閉店していた。
 
 
 

日本橋料理・飲食業組合章

そんな店の入り口に釘付けされた「日本橋料理・飲食業組合章」。なかなか趣があってよろしい。
 
 
 

坂下工務所

坂下工務所
 
この一角にある髙島屋の駐車場にこの蓋はある。右書きで古い形式の電話番号(電話下谷(83)五七六九番)も入っている。異体字の「務」の字、屋号の「ヤマサ」、見どころが多い蓋だ。恐らく浄化槽の蓋ではないかと思われる。残念ながらこの駐車場も再開発の対象地域なので、そろそろ撤去されてしまうはずだ。
 
 
 

三機工業株式会社

三機工業株式会社
 
上の坂下工務所の蓋のすぐそばにこの蓋もある。三機工業は三井グループの総合設備建設会社で、浄化槽工事も手掛けている。
 
 
 

三機工業株式会社

すぐ近くの建物にも三機工業の蓋があった。三井のシンボルマークは「丸に井桁三」で、井戸(4画)に「三」をあしらったものだが、三機工業の場合は本家に遠慮して三角井戸に「三」というのが面白い。
 
 
 

サイヤミーズ コネクシヨン

「送水口」ではなく「サイヤミーズ コネクシヨン」と表記された送水口。コネクションではなくコネクシン。片仮名の小さな「ャ」「ュ」「ョ」といった表記が一般に用いられるようになったのは戦後暫くしてからということらしいので、これもその名残だと思われる。サイヤミーズ(Siamese)とは「シャム(タイ王国の旧名)の」という意味だが、この送水口がシャム由来というわけではなく、シャム双生児から「双口」の連想でこう呼ばれているらしい。Wikipediaにもそう記載がある。
 
 
 

三機工業株式会社

この送水口も三機工業の製品だ。
 
 
 

日本橋髙島屋

向かいは日本橋髙島屋の本館。シャネル、エルメス、タイユヴァン(ワイン)といった有名ブランドの室外機が並ぶ。各ブランドの製品というわけではなく、各売り場のエアコンに繋がっている室外機、だよね。
 
 
 

日本橋髙島屋

その日本橋髙島屋本館に設置されている送水口。壁埋設露出Y型の送水口だが、色つやといい形状といい、何というか艶めかしい。
 
 
 

ぐりぐり写真:日本橋髙島屋の送水口
{“src”:”https://EkikaraManhole.WhiteBeach.org/images/2014.04.10.0/t.jpg”,”width”:”540″,”height”:”445″}

折角なのでぐりぐり写真にしてみた。なんだかちょっと恥ずかしいような、いけないことをしているような気分になる。(ぐりぐり写真: 写真にマウスカーソルを乗せると動かせる)
 
 
 

村上製作所

この送水口に付いている「M」の字をモチーフにしたようなマークについて、比較的古い送水口によく見られるマークだが詳細が分かっていないとのことだった(上記太陽生命ビルの送水口にも同じマークが付いている)。しかしつい昨日、その正体が判明したとの報告が送水口ウォーク主催者のAyaさんよりあった。
 
報告によると、このマークは「村上製作所」のものとのことだ。村上製作所といっても複数存在するので企業情報DBを当たってみたところ、消防・水道用機械器具及び同関連部品の製造・販売を行っている会社として、新橋2丁目に本社のある㈱村上製作所が浮上した。村上製作所の創業は昭和10年とのことだが、日本橋髙島屋本館の竣工は昭和8年なので微妙に合っていない。送水口のヘッド部分が後付けという可能性や、企業情報DBに誤りがある可能性、或いは現存しない別の村上製作所が存在した可能性などが考えられるが、こういった謎解きも面白い。
 
追記(2014/04/14)
畏れ多くもメールで直接問い合わせてみたところ、間違いなく新橋2丁目の村上製作所さんの製品であることが判明した。水口を自由に回転できる蛇口(上に向けて直接水が飲めるような蛇口)の考案者でもあるらしい(村上式自在水栓)。
 
 
 

「電」蓋

日本橋髙島屋周辺に設置されていた蓋。主に電電公社NTTの蓋に使われるT字地紋に、「電」の字が入っている。「電」だけだと電気なのか電話なのか判別できないが、T字地紋なので電話の蓋ではないかと思われる。ただ、なぜ通常の電電公社やNTTのマークが入った蓋が使われていないのか疑問が残る。
 
 
 

「話」蓋

余談だが日本橋の近所、兜町には「話」の蓋もあったりする。「電」の蓋と組み替えてみたいところだ。
 
 
 

「〇」蓋

「電」の蓋の並びに設置されている「〇」蓋。
 
 
 

「〇」蓋

よく見ると元々文字が入っていてそれを潰したように見える。どこかで見たことがあるような気もしたが、該当する蓋はコレクションには見つからなかった。どこかで見たことがあるような気がした理由は後述する。
 
 
 

「〇」蓋

こちらの蓋も兜町周辺に設置されている蓋だが、上記のものとは似ているようで別物だ。
 
 
 

「〇」蓋

中央を拡大。中心の丸が無く、何となくいびつだ。
 
 
 

「〇」蓋

こちらは日本橋、昭和通り沿いにある蓋だが、途切れた「〇」の蓋。
 
 
 

「〇」蓋

これは電電公社のTTSマークを削って作ったマークのようだ。明らかな虐待蓋。先の途切れていない「〇」の蓋のマークもよく見ると、途切れた部分をあとから埋めて「〇」にしたように見える。
 
詳細は分からないが、日本橋・兜町周辺には電電公社の消したい過去が存在するようだ。電電公社の管轄ではない電話・通信関連のインフラがあるのかもしれない。
 
 
 

建設省・日本電信電話公社

建設省(現 国土交通省)・日本電信電話公社(現 NTTグループ)
 
似た「〇」の蓋として、建設省の共同溝の蓋が挙げられる。
 
 
 

建設省・日本電信電話公社

「建設省共同溝・日本電信電話公社電線路」と書かれているようだが、文字は「〇」の上ではなく「〇」の外側に凸で鋳出されている。先に掲載した文字を潰したような跡の残る「〇」の蓋を見たとき、元はこの蓋(の仲間)ではないかと思ったのだが、どうやら違うようだ。
 
 
 

送水口ウォーク・中編

国土交通省東京電力株式会社
 
ついでなので国土交通省の「〇」蓋も。
 
 
 

国土交通省・東京電力株式会社

こちらの蓋には「国土交通省共同溝・東京電力地中電線路」と書かれている。建設省・電電公社の蓋の地紋がT字地紋であったのに対し、こちらの蓋の地紋は電力っぽい地紋なのも面白い。
 
 
 

東大レゴ部 日本橋髙島屋

おまけ。2011年の年末に日本橋髙島屋に展示されていた、レゴブロックによる「日本橋髙島屋」。東大レゴ部の作品。
 
 
だいぶ脱線してしまったが、中編はここまで。後編に続く。
 
 
 
関連リンク
  ●送水口ウォーク・前編(駅からマンホール:2014/03/30)
  ●送水口ウォーク・後編(駅からマンホール:2014/04/21)
  ●消防車特集(余談編1)(駅からマンホール:2014/05/19)
  ●地下式送水口特集(余談編2)(駅からマンホール:2014/06/13)
  ●馬明の路上文化遺産と投資のブログさん
  ●送水口倶楽部さん
  ●路上散歩備忘録さん
  ●送水口ウォーク まとめ(togetter)
 



送水口ウォーク・前編


送水口ウォーク・前編

送水口ウォーク・前編
 
去る春分の日に「送水口ウォーク」なる魅惑的な街歩きが日本橋で実施された。日本橋髙島屋でマンホールの蓋担当講師を務めている筆者としては何を置いても参加しなければならないのだが、滑り込みで何とか申し込みをさせていただいた。主催者は第5回マンホールナイトの異文化交流枠で発表を行ってくださった、送水口倶楽部のAyaさんだ。
 
タイトルが「前編」となっているが、中編後編余談編1余談編2と続く予定だ。頑張らねば。
 
 
 

坂本町公園

集合場所の坂本町公園。奥に見えるのは阪本小学校。阪本小学校の歴史は古く、明治5年の学制公布により翌年の明治6年に開校した小学校で、当時は「第一大学区第一中学区第一番小学阪本学校」と「一、一、一」を冠していた。現在の校舎は関東大震災後の昭和3年に建設されたもので、公園とセットで再整備された、いわゆる復興小学校の一つだ。
 
地名及び公園の名前は「坂本」だが、小学校の名前は「阪本」となっている。一部の古地図で「坂本小学」の表記もあるようだが、調べた範囲では地名・学校名とも昔から別の字を使っているようだ。
 
 
 

阪本小学校の外蛇口

阪本小学校にあった外蛇口。参加者のうち若干名が反応を示す。ホースをぶら下げているハンガーまで骨董品に見えてくる。
 
 
 

阪本小学校の呼び鈴

呼び鈴のような非常ベルのような何か。参加者一同、押してみたい衝動に駆られる(が、なんとか我慢する)。
 
 
 

ぐりぐり写真:壁埋設型送水口
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小学校の裏のホテルに本日最初の送水口があった。(ぐりぐり写真: 写真にマウスカーソルを乗せると動かせる)
 
「連結送水管送水口」と表記され、口が二つ付いた送水口が壁に埋設されている。送水口について詳しくは送水口倶楽部さんを参照してもらうとして、基礎的なポイントを挙げておくと、送水口は水が出てくるところではなく入れるところであり、火事の際には消防車(ポンプ車)のホースがここに接続され、建物の高いところや地下街など、消防車のポンプから直接ホースを伸ばして行けないような場所へ水を供給することになる。建物の高さや床面積が一定以上の場合に消防法施行令で設置が義務付けられていて、しかも送水口は双口形と定められている。口は二つだが、内部で逆止弁を経て連結しており、建物内の送水管は1本になっている。
 
なぜ双口形と定められているのか、消防法施行令には明記されていないが、恐らくは複数の消防車がホースを接続し、滞りなく水を供給するためではないかと思われる。(1台の消防車が交代する際にもう1台が水を供給し続ける)
 
 
 

過保護な送水口

送水口は7階以上の建物には必ず設置されているはずなので、その周辺を探せば必ず見つかるはずだ。こちらの送水口はビニール袋で丁寧に保護されている。でも火事の際は邪魔になりそう。過保護ヨクナイ。
 
 
 

スタンド型送水口・採水口

スタンド型の送水口と採水口。送水口は送水管を経て建物の上の方へ、採水口は地下の貯水槽に繋がっている。貯水槽が地下にある場合、そのままでは採水口側に圧力はかかっていないはずなので、採水口から送水口へ水を供給するには間にポンプ(ポンプ車)が入らないとならない(採水口にポンプ機構が付属する場合も多い)。また、送水口は双口、採水口は単口で、区別のためか蓋部分のハンドルの長さにも違いがある。(追記 4/1: Ayaさんよりコメントを頂き、区別のためというよりは、採水口の方が構造的にきつく蓋を閉めるために爪が長くなっているらしいとのことでした)
 
背後に無地のプレートがあるが、これは先代の送水口・採水口の遺構なのだそうだ。古い建物では送水口を含め消防設備を更新することがあり、この写真の場合は壁埋設型の設備だったものを更新し、新たにスタンド型の設備を設置したということらしい。
 
確かこの辺りでAyaさんから、「消火栓や防火貯水槽の蓋によく消防車がデザインされているが、実際に消火栓や防火貯水槽を使うポンプ車ではなくはしご車ばかりがデザインされている」というような話が出た。この件については宿題と受け止め、実際のところとどこへ文句を言うべきかを調査中だ。送水口ウォークの余談編として纏めるつもりなのでご期待を。
 
 
 

単口送水口

道の反対側に出ベソ発見。女性専用の足裏マッサージ用で、利用には予約が必要、というわけではなく、これは珍しい「単口」の送水口とのことだ。
 
 
 

ぐりぐり写真:単口送水口
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「送水口は双口と定められている」、先にそう書いたが、設置義務のない建物の場合こういった単口の送水口が設置されていることがあるのだとか。(ぐりぐり写真: 写真にマウスカーソルを乗せると動かせる)
 
設置義務が無くても送水口を設置するような防災意識の高い施工依頼主が建てた建物、即ち、しっかりとした建物によく見られるのだそうだ(といっても珍しい)。また、現在では消防車の性能が十分上がっているので、設置義務が無い建物に敢えて送水口や送水管といった消防設備を設置することは殆ど無いと思われる。さらに送水口は規格品なので、わざわざ規格外である単口の送水口を造っている製造会社も今は無いのではないかと想像される。ごちゃごちゃと書いて何を言いたいのかというと、単口の送水口を見つけたらそれはとても珍しく古いものなので、きっとイイ事があるだろう、ということだ。
 
「送水口は双口形」と定めている消防法施行令は昭和36年に制定されているが、これ以前に何か規定があったのかどうかも調べる必要がありそうだ。
 
 
 

注水口

今度は「注水口」と書かれた似たような設備が現れた。この建物は日本橋消防署で、この注水口は消防署の地下にある防火貯水槽に水を入れるための設備なのだそうだ。
 
ここまで送水口(壁埋設型・スタンド型・双口・単口)、採水口、注水口と出てきてもうお腹いっぱいなのだが、驚いたことにまだ公園のある一区画をぐるりと半周しただけだったりする。
 
 
 

日本橋消防署

冒頭の写真。幸運にも訓練で実使用中の送水口に遭遇した。突然謎の一団に注目されて驚く送水口。
 
 
 

日本橋消防署

訓練中の隊員さんも嫌な顔一つせず対応してくださり、消防隊男子の株が急上昇。
 
 
 

日本橋消防署

送水口は毎日磨いているとのことでピカピカ。一方周りの壁が削れているのは日々の訓練の証。実に頼もしい。
 
 
 

壁埋設露出Y型送水口

しばらく進むと鏡面仕様の壁に取り付けられた壁埋設露出Y型の送水口に遭遇。宙に浮いているようにも見える。
 
 
 

電防

筆者はもちろん蓋の人なので、何かネタを探さねばと思っていたら、この蓋なーに?という質問があがった。
 
 
 

電防

「電防」と書かれた小型の蓋。字体も面白い。
 
「電防」とは「電気防食」の略で、金属管の傍に陽極を設置し、防食電流を流すことで管の腐食を防止する技術のことだ。腐食しやすいガス管によく使われていて、「TB」と書かれたガスの蓋はこの設備(ターミナルボックス)を埋設している。と、このくらいの説明はスラスラ出てくる。よかったらこの記事も。
 
この蓋の下にある電気防食設備で何を腐食から守っているのかまでは分からないが、地中に何か金属があり、それを守っていることは確かだ。
 
 
 

中島芳治郎

この辺りのビルの定礎には「中島芳治郎」の名が入ったものが幾つか見つかり、送水口ウォーク参加者の間で、どこの誰だか知らないけれど話題の人物となった。後から調べてみたら、日本橋兜町にある中島クリニックの先代の院長なのだそうだ。
 
 
 

壁埋設露出Y型送水口

壁埋設露出Y型、蓋なし、ちょい斜め、直下に遺構あり。
 
 
 

排気口

ちょっと可愛らしい排気口。白鳥の顔にも見える。
 
 
 

スタンド型送水口

スタンド型の送水口。先に採水口と一緒に出てきたスタンド型の送水口は「水平双口タイプ」だったけど、こちらは「垂直双口タイプ」。コンパクトなので最近の流行りなのだとか。
 
 
 

潜望鏡型送水口?

同じものを逆さに取り付けて潜望鏡のようになった送水口。アーケードに設置されていればアーケード型と迷うことなく言えるけど、これをそう呼んでよいのかどうかは迷うところ。
 
送水口は大きく分けて、壁埋設型・スタンド型・アーケード型の3つに分類できるとのことで、詳しくは送水口倶楽部さんを参照されたし。
 
 
 

潜望鏡型送水口?

横から見ると排水用の蛇口もあった。建物上部への配管も外から確認でき、大サービスの物件。かつては壁埋設型だったらしい遺構も見える。
 
 
 

中島芳治郎

この建物も中島芳治郎さん関連。定礎にある昭和の「和」の字も面白い。
 
 
 

千代田橋

首都高下、楓川跡に架かる千代田橋の隣に巨大な配管設備があった。脇に水道局のテレメーターがあったので、これは水道管だと思われる。楓川は昭和37年に埋め立てられており、この千代田橋は昭和3年に架橋されている。この水道管も同時期に敷設されたのではないかと想像される。この部分のみ地上に露出する形で山型になっており、中央に空気弁らしきものが設置されている。
 
 
 

空気弁

縛られていて中身はよく見えない。結構でかい。
 
 
 

自働洗滌槽蓋

脇に少しそれると自働洗滌槽と同じタイプの2連の下水君蓋があった。下水道台帳で調べてみたら防潮扉付人孔とのことで、日本橋川に繋がっているようだ。というかしばらくぶりに見てみたら下水道台帳がちょっと進化していて驚いた。2/28から新システムになったらしい!?
 
 
 

街燈

東京都中央区(街燈)
 
ここでニアミスした蓋を一つ紹介。日本橋近辺の蓋でこれを忘れてはいけない。「街燈」と書かれていて、都章のようで都章ではない紋章が入っている。地図記号の灯台と同じ形状だが、街燈と灯台、関連は無さそうに思える。都章(東京市章)の誤植という説が有力ではないかと思うが、どうなのだろうか。同じ中央区内には、区の花「ツツジ」と区の木「ヤナギ」がデザインされた街灯の蓋も多数存在する。ひょっとすると同じ系譜なのかもしれない。
 
 
 

街燈蓋の風景

この蓋は昭和通り沿いに何枚か残っており、状態の良いものは江戸橋1丁目交差点、日本橋駅のD3出口近くにある。昭和通りの整備と同時期の設置とすると昭和3年まで遡ることができる。
 
 
この辺りで前編は終わり。中編に続く。
 
 
 
関連リンク
  ●送水口ウォーク・前編(駅からマンホール:2014/04/10)
  ●送水口ウォーク・後編(駅からマンホール:2014/04/21)
  ●消防車特集(余談編1)(駅からマンホール:2014/05/19)
  ●地下式送水口特集(余談編2)(駅からマンホール:2014/06/13)
  ●送水口倶楽部さん
  ●路上散歩備忘録さん
  ●送水口ウォーク まとめ(togetter)