下水君100周年記念企画 ~ 東京市型鉄蓋


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東京市型鉄蓋
 
都章を下水構えが囲むデザインの東京都下水道局の紋章。下水君の愛称で親しまれるこの紋章は、東京市下水改良事務所の紋章として明治44年(1911年)10月26日に東京市公報で初めて告示されている。今年は丁度100周年にあたり、10月26日が100歳の誕生日だった。本来なら誕生日当日に盛大なお祝いを行うべきだったのだが、マンホールナイト髙島屋セミナーの準備などに追われ、すっかり忘れてしまっていた。1ヶ月遅れたが、100周年のお祝いということで下水君特集をしばらく行うことにした。2、3回の特集で尽くせるかと予想していたのだが、写真を整理してみたら色々出てきて、結局14回21回くらいの特集になりそうだ。というわけで、これからしばらくは下水君特集が続く予定だ。あんな下水君やこんな下水君の写った写真の棚卸し、筆者のPCにある下水君フォルダが火を吹く。
 
トップを飾る蓋は、下水道局発行のシリーズ 下水道探訪(PDF)によると昭和42年まで製造されていたという、古いタイプの下水君の蓋だ。都章(東京市章)の中央に穴が開いているのが特徴だ。そのせいで中央部分が五重丸になっている。サイズは概ね直径650mmだが、マンホールのふた 日本篇(林丈二 サイエンティスト社)によると、昭和4年の下水道設計標準圖には 2.137尺(648mm)と 2.157尺(654mm)のサイズのもが規定されており、昭和37年の仕様書では 648mmに統一されているとのことだ。
 
また、この形式の蓋には、中央が球面状に僅かに盛り上がっているものと、まったく平らなものとが存在する。中央が盛り上がっている蓋の方が古いタイプのような気もするが、確証は無い。
 
 
 

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地紋部分の穴の大きさが微妙に大きい蓋。
 
 
 

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穴ではなく丸の部分(穴の縁の部分)が大きい蓋。戦前から昭和40年代まで長い期間にわたって製造・設置されているせいか、細かい違いがよく見られる。
 
 
 

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こちらの蓋は珍しいタイプ。東京市型の地紋と下水君とが融合しており、中央部分は五重丸ではなく四重丸になっている。
 
 
 

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同じく東京市型の地紋と下水君とが融合したタイプの蓋で鍵穴の配置が縦になったもの。
 
 
 

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こちらも珍しい。放射状に伸びる線が最終防衛ラインを超えて下水君に迫っている。危うし、下水君!
 
 
 

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鍵穴部分に青いキャップがついた蓋。
 
 
 

青いキャップ  青いキャップ

青いキャップ部分を拡大。右は現行の桜蓋に稀についている青いキャップ(この場合は蝶番付きの超小型の覆い?)を拡大したもの。この部分に青いキャップがあるものは、災害時に仮設トイレが設置できるマンホールなのだそうだ。従って左の青いキャップも同じ意味を持つのではないかと想像される。
 
 
 

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続いて大型の蓋。マンホールのふた 日本篇によれば、昭和4年の下水道設計標準圖には 2.66尺(801mm)と 2.681尺(812mm)のサイズのもが規定されており、昭和37年の仕様書では 810mmに統一されているそうだ。
 
 
 

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こちらは線がはっきりした下水君。下水構えの「水」の字にあたる部分の跳ねがしっかりしている。
 
 
 

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さらに中央部分の下水君が大きめの蓋。地紋から続く中央部分の五重丸が等間隔に並んでいて美しい。
 
 
 

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全体的に線の太い蓋。
 
 
 

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地紋と下水君とが融合気味の蓋。大型の蓋にも細かい違いがよく見られる。
 
 
 

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こちらは東京市型模様が三重に連なる大型の蓋。これは本物の蓋の写真ではなく、合成写真なのでご注意を。昭和4年の下水道設計標準圖には載っていたそうで、マンホールのふた 日本篇にも掲載されているが、現在では発見したという報告を聞かないので絶滅してしまったのではないかと思われる。もし発見したという方がいらっしゃったら是非是非ご一報を。サイズは1040mmとかなり大型の蓋だったようだ。
 
 
 

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中央に穴の開いていない、本来の形の都章が中央に入った下水君。シリーズ 下水道探訪(PDF)によるとこの蓋は昭和44年から使用されているという。
 
 
 

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穴が小さい蓋。
 
 
 

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逆に穴が大きい蓋。鼻息が荒い感じ。
 
 
 

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三つ並べてみると穴の大きさの違いがよくわかる。
 
 
 

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穴の無い蓋も存在する。上下の切り込みも無い。
 
 
 

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できるだけ穴の数を減らしたかったのか、鍵穴が一つのみの蓋もあった。
 
 
 

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ちょっとお化粧した蓋。
 
 
 

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都章のトゲトゲの丸の中に「汚」の字が入った蓋。
 
 
 

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同じく「雨」の字が入った蓋。古くから下水道設備のある東京区部ではほとんどが合流式の下水道だが、比較的新しく敷設された下水道では分流式になっており、汚水・雨水の区別が蓋でわかるようになっている。
 
 
 

下水道設計標準より

これらのタイプの蓋については現行の下水道設計標準にも「旧標準型人孔鉄蓋」として記載があるのだが、汚水の表記はよく見られる漢字の「汚」ではなくひらがなの「お」になっている。筆者はまだ見つけたことが無いのだが(2011/12/20:大型の「お」表記の蓋を追記しました)、この「お」表記の蓋について夢の入口でさんからコメントで設置場所の情報を頂いている。明らかに「汚」表記のものより数は少ないようだ。これは恐らく、以前、この蓋が現役の標準蓋として設置されていた頃には「汚」の表記だったのが、桜蓋の登場に合わせて「お」の表記になり、しかし新設されることなく補修用の鉄蓋として交換されるのみの使用だったからではないかと想像している。
 
 
 

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大型の蓋。
 
 
 

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大型の汚水蓋。
 
 
 

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「汚」ではなく「お」と書かれた大型の汚水蓋。
 
 
 

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大型の雨水蓋。
 
 
以上、初回の下水君特集では東京市型地紋の鉄蓋を一通り並べてみた。まだまだ続くので下水君ファンの皆さまはご期待ください。
 
 
 
関連リンク
  ●下水君100周年記念企画02 ~ 日之出水道機器株式会社
  ●下水君100周年記念企画03 ~ 鉄蓋工業株式会社
  ●下水君100周年記念企画04 ~ 変則東京市型
  ●下水君100周年記念企画05 ~ デザイン蓋
  ●下水君100周年記念企画06 ~ コンクリート蓋
  ●下水君100周年記念企画07 ~ 化粧蓋
  ●下水君100周年記念企画08 ~ L型汚水桝・雨水桝蓋
  ●下水君100周年記念企画09 ~ 汚水桝・雨水桝鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画10 ~ 特殊人孔鉄蓋
  ●下水君100周年記念企画11 ~ 自働洗滌槽
  ●下水君100周年記念企画12 ~ 燈孔蓋
  ●下水君100周年記念企画13 ~ 中水道
  ●下水君100周年記念企画14 ~ その他の蓋
  ●下水君100周年記念企画15 ~ 送泥管
  ●下水君100周年記念企画16 ~ 私設下水道施設檢査證章標、他
  ●下水君100周年記念企画17 ~ 縁石、縁塊等
  ●下水君100周年記念企画18 ~ 鉄蓋虐待
  ●下水君100周年記念企画19 ~ 越境記録
  ●下水君100周年記念企画20 ~ 下水君の親類
  ●下水君100周年記念企画21 ~ 生い立ちの記
 

この記事へのコメント 8件

  1. 夢の入口で より:

    昭和44年から使用されている下水君の蓋に巨大な穴の開いた蓋が存在します。
    新宿3丁目のヤマダ電機(LABI新宿東口館)前に数枚あります。

  2. アバター画像 駅からマンホール より:

    おお!早速明日見に行きます!

  3. 竹内 より:

    大変結構な記念企画にうっとりしております。

  4. アバター画像 駅からマンホール より:

    早速撮影してきました<巨大な穴の開いた蓋

    折角なので画像を追加しました。他にも、下水君危うしの蓋や、穴の無い蓋、昭和44年以降の大型の蓋の写真などを追加しています。

    泥縄ってこういうのを言うんですね。

  5. 夢の入口で より:

    北区の堀船橋の近くに下水君の下に○に「お」と入った蓋が存在します。
    嗚呼、コメントも泥縄だ。

  6. アバター画像 駅からマンホール より:

    泥縄ついでに「『お』と『汚』」、青キャップについての考察を追記します。

  7. 夢の入口で より:

    現行の都章蓋(s44~)にもコンクリート蓋と同様に、紋章が極細や極太の物が存在する様です。

  8. 夢の入口で より:

    身近な蓋だけに何度読み直しても面白いです。
    自分でも手持ちの写真をネタにまとめてみたいと思います。
    その際はこちらの記事のリンクを貼らせて頂きたいと思います。

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